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お知らせ(『農業と経済』編集部から)

(編集雑感より) 

 文部科学省が10年ぶりに全面改定する小中学校の学習指導要領で、農業を含む体験活動に本格的に取り組むことを明記するとのこと(日本農業新聞、2017年3月19日付)。体験によって学ぶ活動を、重視していく方向のようです。
 2020年から順次導入される次期学習指導要領では、小学校で英語が教科化される予定です。ただでさえいっぱいの時間割のどこに英語の授業を入れるか、各学校が対応に追われていることがニュースになっています。現場の先生方の負担が増えるのであれば手放しには喜べませんが、子どもたちが農業や農家の生活に触れる機会をつくることは、重要なことだと思います。
 私の高校時代には「農業実習」の授業がありました。東京都にある学校だったのですが、今思い出すとかなり本格的な内容で、イモなどの植え付けから収穫まで年に何度か、埼玉県の農場に通うというものでした。都会の女子高生たちが虫一匹にキャーキャー騒いでいたことを思い出します。
 今は『農業と経済』の仕事に関わっていますが、原点にはその農業実習の経験があるのかもしれません。都会はアスファルトで覆われていて土はほとんど剥き出しになっていませんでしたが、軍手を通じてほっこりとやわらかい土に触れた時間、安心感を得たことを思い出します。
 現在私は土を耕す仕事はできておらず、農家の方々にはいつも頭が下がる思いですが、この雑誌にしか担えない役割があると信じて仕事をする日々です。 
 今号より、新連載「農業職ってどんなお仕事?――地方自治体公務員をめざすあなたへのメッセージ」を開始します。農業への注目が集まっているいま、自治体への期待や関心もさらに高まっていくことと思います。日本各地の職員の方々のリアルな姿を知る格好の機会で、どんな方々と出会えるか、楽しみにしています。(K)

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金正男氏暗殺の報道が繰り返されています。今の日本人にとっては、暗殺が起こるような社会状況は、ピンとこないかもしれません。「北朝鮮だから」と考える人もいるでしょう。ですが、今の日本でも、「えっ?」と耳を疑うようなことは、起こっています。なぜかいまのところあまりテレビでは報道されない「森友学園」への公有地売却問題です。
 大阪にあるこの学園は、現在塚本幼稚園を運営していますが、そこでは教育勅語を園児に暗唱させるなど、かなり独特な教育をしているといいます。その学園が、安倍昭恵首相夫人を名誉校長として「安倍晋三記念小学校」なり、「瑞穂の國記念小學院」なり、小学校を建てるという、ここまででもかなり腰が引ける話ですが、その土地売買に大きな疑惑がかかっています。近接する公有地は14億で売却されたにもかかわらず、この学園はこれに近い条件の土地をただに近いような金額で入手しました。すでに国会でも野党が質問していますが、安部首相は関係を完全否定しています。関係ないで住む話ではありません。
 ことの真相はまだ不明ですが、もし首相に関わりがあるなら、大スキャンダルです。かつてのロッキード事件以上かもしれません。それを関係ないで済まそうとしていること、テレビ報道が異常に少ないこと、ともに「えっ?」と思えることです。
 東京と地方、都市と農村部といった経済格差や、都市部における富裕層とそれ以外の経済格差の拡大は指摘され続けています。かたや東日本大震災やフクシマ、熊本地震といった地方の被災地の復興は時とともに置き去りにされつつあるところも増えています。政策では競争力アップや規制緩和、それに一億総活躍といった「前向き」な言葉が幅をきかせていますが、垣間見える「えっ?」と思うようなできごとが、踊る言葉の裏に隠された真実だとすれば、報道機関がいまこそその真実に迫るときではないでしょうか。「えっ?」と思う疑問に慣れてしまうのは危険な兆候だと思います。(R)

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就任から時間をおかず、トランプ新大統領は、TPP離脱に正式に署名しました。これでTPPは実質的に暗礁に乗り上げたといえますが、かわって浮上しているのが日米FTA。「アメリカ第一主義」を公然と掲げるトランプ大統領の下で、強力な圧力がかかると思われます。日本を取り巻く情勢が大きく変化するのと時を同じくして、国内でも大きな変化がありました。すでに問題となっている豊洲の新市場です。
 盛り土問題の発覚から、その移転の経緯や責任が取りざたされてきましたが、これまで8回の調査では安全とされてきたにもかかわらず、最終調査で基準値以上の毒性物質がいくつも、あちこちで検出されました。残念ながらまだその原因も明らかではありません。こうなると、盛り土や地下空間の是非以前の問題です。国際的にも高い日本の食のへの信頼が、大きく傷つきかねません。
 食の安全にかかわって、今回特集では新たな2つの制度を取り上げました。安全性にかかわるHACCPの義務化と、むしろ「意識」に関わる原料原産地表示制度です。後者は、国産品を売りたい生産者と国産品を買いたい消費者を結ぶ意味では、どちらにも有益なはずですが、その制度化をめぐってはあまり一致しているようではありません。さらには直接的なコスト負担を求められる食品業界の意向も加わり、かえってわかりにくいものになるのではないかと懸念します。
 2020年の東京オリンピック開催に向けて、本来ならば日本の食と食品の安全性や質の高さをPRすべきところですが、どうにもその反対の現実ばかりが表面化しています。原発汚染水対策で目玉のようにいわれた「凍土壁」の失敗もひっそりと報道されました。「安全」を求めるさまざまな制度や諸策が、結局「ビジネス」によって「食い物」になってはいないでしょうか。結果として本来最も大切な資源を失ってしまう、そんな結果にならないよう、慎重な判断と嘘のないコントロールが求められています。(R)

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『農業と経済』2017年3月臨時増刊号 (vol.83 No.2)
特集◈ ここまで来たバイオ経済・生命操作技術――私たちはどう向き合うか

発売日は、2017年2月7日の予定です。


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アメリカの大統領選で、トランプ氏が選出されました。ジャーナリストの木村太郎氏はこの結果を予想していましたが、大方の報道はヒラリー候補が選ばれるであろうと予想していたので、驚かれた方も多かったと思います。イギリスのEU離脱(Brexit)の結果も「驚き」でしたが、いずれも投票者の半数ほどはこの結果に票を投じたわけなので、「驚き」はあくまで報道ベースともいえます。足腰が弱っているようにみえる現在の報道を鵜呑みにすれば、まだまだこれから「驚く」ことも起こるでしょう。
 世界では経済格差が広がり、ごく少数の富裕層に富が集中しているのですから、富裕層以外の人たちは明らかに増え続けています。これまでの政治・経済の延長線上の選択肢と、それを変えようという選択肢があれば、後者に数が集まるのは当然予想できることでもあります。
 しかし、トランプ氏が大統領となり、安倍政権が延長され、プーチン大統領がその横に並ぶ姿を想像すると、それぞれ違う主張をしているはずなのに、なにか共通する同質の危険性を感じるのはわたしだけでしょうか。大統領選もBrexitも、変革を求める声は、どうも少し違った受け皿に流れていっているように思えます。この流れが堰をきるようなことになれば、たいへんな奔流となる可能性をもっています。
 今回特集で取り上げられた若い農業経営者のもつ「新しさ」は、こんな危うい時代でも、確かな生き方があると語っています。農業によって、自らのよって立つ現実をまさに地に足のついたものとし、自分の手で自分の生きる場所を作りだしているという、現代の都市生活にはない実感を伝えてくれます。これまで農業は子どもに継がせたくないという農業者が多かったように思いますが、新しい農業者は、自信を持って自分の子どもたちにその道を奨めるのではないでしょうか。彼らが農業とともに生きる理由は、「希望」なのだと思います。
 2017年がみなさまにとって希望あふれる年になりますように。(R)

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「山も家も、ぜんぶとられたんじゃ」。林業とは縁がないと思っていましたが、ふと小さい頃に祖母からよく聞かされたこの恨み節めいた言葉を思い出しました。愚痴を普段は言わない祖母でしたが、この言葉だけは別でした。
 私の曾祖父は、広島県の山奥の町会議員で、山林50町歩、田畑1町5反を所有していた農家でした。計算したところ50㌶、東京ドーム約10個分なので、管理のことを考えると気が遠くなります。
しかし祖父の代に、先祖伝来のその土地が、骨肉の財産争いの渦をもたらすことになりました。
 明治39年生まれの祖父は、いわゆる社会主義の政治活動家でした。木を切り出しては、消費組合や大工左官組合を組織するという目的に使ったそうです。「財産を潰してしまう」と風評が立ち、親族間で争いが起こりました。
 結局、他の親族が名義を得て、その土地を管理することになりました。「結婚のときに、両親の面倒をみるかわりに私たち夫婦に譲るという約束だったのに……」。そんな悔しさが、祖母にはあったようです。
 つい先日、その土地が、何年も競売にかけられた状態だと知らされました。先祖代々のお墓がいくつも並んでいる山奥の土地に、買い手がつかないようです。そこに眠る祖母は、そのありさまをどう見ているのでしょうか。
 山が財産であった時代なんて、いまではおとぎ話のよう……この特集に集まった原稿を読むまでは、そう思っていました。
 しかし、です。「丸太を満載した軽トラが、そこら中走り回っている」(丹羽健司さんの論考より)。木材自給率は30%を超えたそうです。
 本特集では、視点を「農」から「林」に向かわせ、再び「農」へと立ち戻れるよう、導入とまとめを設けました。地域を考えるうえで、森林・林業への視点も欠かせないと考えています。(K)

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 豊洲の新市場が大きな問題となっています。当初は、移転時期をめぐる、「推進派」と「反対派」の対立がクローズアップされていました。その後、盛り土問題が表面化し地下の浸水が発覚して、いまや市場関係者はだれもが、このままの移転には非常に強い不安を抱いています。都が盛り土による安全性を強調していただけに、行政に対する不信感は相当に高まっていると思います。
 新市場は、海水が使用できないとか間口が狭くてマグロが解体できないといった問題点も指摘されていましたが、こと安全性についての不安は、直接消費者に影響します。日本最大の人口をもつ首都東京の消費者が、毎日の食に不安を抱くそのストレスの影響は、はかりしれません。中途半端な対策や説明ですませれば、いずれさらに大きな問題となることも予見されます。市場関係者にとっては死活問題、影響は消費者のみならず、生産者にも及ぶものと思います。もっと生産者、消費者の声が表明されてよいのではないでしょうか。
 安全性とは別に、新市場をめぐる問題は新国立競技場建設問題を連想させます。再選考されたものの、結局「責任」の所在はとかげのしっぽきりという感は否めません。今回の盛り土問題についても、どこに責任の所在があるのか、本来真っ先に自らの責任に言及すべき当時の都知事をはじめ、責任の重いはずの人ほど、無関係だと言い張っている気がします。
 平成30年に予定される直接支払いと生産調整の廃止は、米農家をはじめ日本の農業にとっては大きな「イベント」ともいえます。オリンピックのように社会的関心は高くないかもしれませんが、直接日本の食を支える部分に悪影響が生じるとすれば、その深刻さ、切実さはオリンピックよりも大きいでしょう。食の安全・安心が守られることはもとより、無責任な判断が行われないようにしなければなりません。そのためには責任を曖昧にする今のシステムではなく、責任の所在を明確にし、同時に責任ある行動を評価し、失敗に対してもその責を負えば次の機会を保証する、いわば「責任のとれる」新たなシステムが必要なのかもしれません。(R)

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『農業と経済』電子版ライブラリに、2001年以前のデータ60年分を追加しました。

定期購読者は、「最新号」を含む、1940年1月号以降のバックナンバー約900冊が読み放題です!

この機会に、電子版ライブラリが無料で利用できる定期購読をお申し込みください。

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日本が過去最高のメダル数を獲得したリオデジャネイロオリンピックも終わりました。本号が刊行される頃には、9月8日からのパラリンピックが開催されていると思います。オリンピックの閉会式では着物姿の小池百合子東京都知事が大きな旗を引き継ぎました。安部首相は、有名なゲームキャラのスーパーマリオ姿での登場でした。世界に対して何を伝えたかったのか。わたしには違和感が強く残りましたが、国際的にはインパクトが強かったようです。
 リオオリンピックに関心がある日本人は3割強、東京オリンピックで約5割から7割といった調査結果がでています。実際のところ、関心のない層も少なくなく、参加することに意義があるといわれても、メダル獲得による注目度の上昇は、やはりすごいと感じます。今回金メダルを獲得した選手を、どれだけの人がこれまでにご存じだったでしょうか。世界一になるのはすごいことですが、メダル獲得による知名度の広がりは、強烈です。
 景気低迷に苦しむ日本の中小企業のなかには、たいへん高い技術や他にない製品をもちながら、知名度の低さに販売を伸ばせず、撤退を余儀なくされる会社も少なくありません。チョークの羽衣文具のように、廃業してはじめてそのニーズの高さがわかるようなケースもあるものと思います。日本人は、どうもマーケティングがあまりうまくないのかもしれません。
 マリオ姿が国際的に強く印象を与えたように、「アベノミクス」や日銀の大胆な金融緩和政策、そして「アンダーコントロール」と、国際的には安倍政権のパフォーマンスが、これまでかなり成功したようにみえます。しかし、いっこうに上向く感のない景気動向、見通しのつかない汚染水処理など、その「現実」のただなかにいる日本国民には、実態はどうみえているのでしょうか。マーケティングやブランド化の成功は、製品のよさがあってのことです。名前を売ることに成功しても、実態が伴わず馬脚を現しては、かえってダメージが広がります。東京オリンピックとその後の日本がゲームオーバーにならないように祈りたい気分です。(R)

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『農業と経済』2016年9月号 特集:「規制改革議論」と現場の実像

この号における、下記の論考をオンラインで無料公開しています。この機会に、ぜひご覧ください。

■第1部 生乳流通再編をどうみるか
「解説:生乳の流通と価格形成の仕組み」 『農業と経済』編集委員会
「生乳流通問題とは何か―規制改革会議の議論を超えて」 矢坂雅充
「生乳流通と規制改革会議の意見について――大山乳業農業協同組合組合長、中国生乳販売連合へのインタビュー」 林田光平
「乳業メーカーは改革意見をどうみるか」 本郷秀毅

https://yondemill.jp/contents/17602?view=1

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参院選も終わり、東京都知事選に話題が移っていますが、本誌が出る頃には決着もついていると思います。参院選は、大方の予想通り、獲得議席では与党の圧勝でした。初めての18歳選挙権の国政選挙ということは話題になりましたが、肝心の選挙の争点は曖昧でした。アベノミクスにしても改憲にしても議論が集約されることはなかったように思います。
 結果からしても野党の力不足は否めませんが、それにしても安倍政権の強さの源泉はどこにあるのでしょう。ちょうど10年前に発足した第1次安倍内閣が約1年で首相のあっけない退陣によって幕を引いたことを思うと、この疑問はなおさら膨らみます。挫折を乗り越え立ち直るために、なにがあってもぐらつかないほどにその信念を強めてきたものと想像します。この信念の強さが、今のところ他の政治家やマスコミを圧倒している、ということなのでしょうか。
  参院選の追い風を受けて、来年度予算でも「攻めの農業」や地方創生関係の予算がかなり組み込まれるのだろうと思います。しかし経済の実態をみれば、アベノミクスについて何の検証もなく屋を重ねていくのは、いかにも無謀としか思えません。選挙で勝ったということを政策の成功と同じとみなすことは到底できない状況だということは明らかではないでしょうか。仮に成功があるとすれば、国民にとってではなく政権にとっての成功です。
 自分の描いたヴィジョンの実現のためであればどんなことでもし、何でも利用していく、それは政治家として悪いことではないかもしれません。経済が苦手な首相であれば、誰かの知恵を借りることも必要でしょう。問題は垣間見えるそのヴィジョンが、どうも国民の幸福ではなく、「国」や国家の繁栄という、優先度の逆転したもののようだと思えることです。そこでは国民は国の構成員にすぎず、「敗戦国」であってはいけない。これを実現しようとすれば、通っていく道は、国民の望む道とは違いそうです。この不安が杞憂で終わるように、これまでの政策の問題点を整理し、検証し、冷静に判断を下すべきではないでしょうか。(R)

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熊本地震に被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。
 地震の際、阿蘇大橋が崩落した映像にショックを受けた方も多かったと思います。橋のある南阿蘇村には、本誌連載の「田舎のヒロインズ」の関係者の方々が住んでいる……はたしてどのような困難に見舞われているのか、心配するばかりでした。
 今回ご執筆いただいた大津愛梨さんの状況を、ご自身のSNSでの発信により知ることができました。幸いにも、心配はよい意味で裏切られ、太陽光などによる自家発電により、ご家族そろって元気よく過ごされていました。いかに地震後をサバイバルされたかは、誌面をご覧ください。
 大津さんは「田舎のヒロインズの挑戦」連載の初回で、「農家が食べ物とエネルギーをつくる存在として頼られるようになりたい」と宣言されていました。大きな地震をものともせず、ほぼいつも通りの生活を送られたのはその信念の結果であると思います。今回の原稿で、その持論がぶれていないことに、また感銘を受けました。
 自分の生活を、電力会社、水道会社、スーパーなどに頼っていると、いざ災害に見舞われたとき、にっちもさっちもいかなくなる――外部に生活の基盤を頼ることは、危ういものだということが、非常時に表出します。
 現代では日本人の約半分が、三大都市圏に住んでいます。私を含めて、都会生活を送る人たちはみな、いざというときの危うさを、見て見ぬふりをしているのではないでしょうか。
 いつどこで災害に遭ってもおかしくない、災害大国に住む日本人は、大津さんの生き方から学ぶべきことが多いはずです。(K)

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 お詫びと訂正 - 2016.08.12

『農業と経済』2016年9月号の5頁(目次)において、

執筆者名に誤表記がございました。

謹んで、お詫び申し上げます。

誤)八坂雅充

正)矢坂雅充

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昭和堂まで郵送してくださるよう、お願いいたします。

http://www.showado-kyoto.jp/files/moushikomi.pdf

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東日本大震災から、5年。被災地ではまだ復興もままならない地域も多いなか、今度は九州で大きな地震災害が起きてしまいました。震度7、震度6クラスの地震が続き、広範囲で2次災害、3次災害が心配され、被災地の方々の不安はいかばかりか、想像を絶するものと思います。亡くなられた方のご冥福をお祈りするととともに、一日も早く被災地の生活が落ち着きを取り戻せることをお祈りいたします。
 この大規模な自然災害の少し前、国際社会には「人」による激震が走りました。「パナマ文書」です。タックスヘイブンと呼ばれる軽税率地域の金融センターを利用する法人や個人の取引を記載したこの文書は、一国の首脳を辞任に追い込むなど、大きな影響が拡がっています。タックスヘイブンで動く金額は世界のGNPの4分の1にもあたる2200兆円ともいわれ、日本の企業等からもケイマン諸島だけで50兆を超える金額が流れ込んでいると言われています。これだけの金額が各国の税収に関わっているにもかかわらず、その実態がなかなかわからなかっただけに、この文書が公表された意味は計り知れません。
 この事態に日本の政府は、「企業への影響を考えコメントを控え」、「調査しない」方針を出しました。どうして「国民への影響を重視し」「徹底的に調査する」ことをしないのか。GDPの250%にのぼる先進国中最悪の財政赤字を抱え、消費税増税をはじめ、国民の税負担の増加を求める政府の判断とは思えません。もちろん、タックスヘイブンを利用することが、即違法ではありませんが、不透明なお金の動きは、違法性の温床であることはだれでも想像できるでしょう。
 これだけ露骨になにを重要だと思っているかを見せつけられると、大災害からの復旧・復興もどこに視点があるのか、透けて見える気がします。政府のこうした判断が、内需の活性化にとって最大の障碍であり、人口減少の要因ではないでしょうか。国民のこの不安がなくならない限り、どんな経済・金融政策も今の流れは変えられないように思えます。(R)

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AI(人工知能)が囲碁のトッププレーヤーに勝利したことがニュースになりました。すでにチェスや将棋では、コンピュータが人間に勝っていましたが、囲碁はまだ10年はかかるとみられていただけに、少し驚きです。漠とした広がりの中ではじまる、ある意味直観的で、交互に対話するように石を打つ囲碁は、かなり「人間的」なゲームのように思います。このAIを開発したのは、車の自動運転で先行するグーグル傘下の会社です。
 今回のコンピュータの勝利は、棋譜を積み上げ、処理速度を上げることによって解を導くこれまでのような形ではなく、AIによるディープランニングだということが、人間の脳の能力をコンピュータが超える日も近いことを予感させます。10年後には多くの分野でロボットが人間に取って代わり、20年後には日本での仕事の約半分は完全機械化されるという研究も発表されました。
 農業の世界でも、IT技術を利用した精密農業や圃場管理、流通システムやインターネットでの直販など、コンピュータの活躍は少しずつ広がっています。6次産業化や農商工連携に踏み出すきっかけの一つは世代交代でしょうが、それはまたITとの距離感の変化ももたらします。人と人とのつきあい方もITによって、とくに日本ではずいぶん変わってきていると思います。
 新しい時代のなかで、農業経営が多角化、連携を拡げていくことは一つの大きな流れであることは間違いありません。コンピュータの力も大いに使うべきでしょう。圃場のデータ管理だけでなく、ロボットが農作業に従事し、AIが経営判断をおこなう日が来るのも近いのかもしれません。その時には、コンビニのレジと農業経営のAIが瞬時に情報と判断を共有し、それによって工場で遺伝子組み換え作物が即座に栽培されるようになるかもしれません。ただ、そんな時代でも、農家の直販や縁故米、自家菜園のような「人間臭い」営みは決してなくならない、そんな気がします。「人間臭さ」は、「時代遅れ」で片付けられない案外したたかなものではないでしょうか。(R)

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 『銀の匙』というタイトルを冠する人気作品があります。昭和生まれの人間にとっては中勘助による自伝的小説ですが、平成生まれがまず思い浮かべるのは、北海道の農業高校が舞台で「酪農」がテーマの青春漫画のことでしょう。
 2011年に少年コミック誌で開始された、若者に人気の女性漫画家・荒川弘さんによる作品です。前号でご紹介した川崎秋子さんと同様に、彼女も北海道出身で、酪農の家に生まれ育ったということです。高校生が「夢」を追い求めて、命の現場から学ぶ描写はテンポがよくいきいきとしているとともに、農業という未知の世界に触れる魅力にもあふれています。累計発行部数が1000万部を超えるという大ヒットとなっているということで、それまで少年漫画の世界とは無縁であった農業に、子どもや若者の関心が寄せられる結果となっていることは間違いありません。
 先日、朝日新聞の報道に、「農業高校、女子が5割目前――ペット飼育・料理……授業充実」というものがありました(2016年1月28日付)。記事によると、その漫画のヒットも、追い風となっているそうです。農業生産のみならずお菓子作りなど加工、ペット関連など、幅広く学べて就職につながる面が人気の要素なのでしょう。農業高校の数は昭和40年代と比べると半減しているそうで、生徒の需要にあうように姿を変えている面もあるのかもしれません。
 さて、大学でも、「農業系」は注目を集めています。農業系、地域系の学部が増えているのです。文部科学省の「国立大学改革プラン」をふまえた学部の再編と新設の動きが背景にありますが、私立大学でも、農業や食についての新学部設立の動向があります。食や農業へ関心を抱く人は、近年確実に増えており、解決すべき課題は山積みです。
 今号より開始の「農業系・地域系学部の最前線」では、その動きを追い、ご紹介していきたいと思っています。(K)

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 西日本が記録的な大寒波に見舞われた1月下旬の日曜日、風のとどろく音を自宅の窓越しに聞きながら、小説を読みました。タイトルは『颶風(ぐふう)の王』(2015年、角川書店)。「颶風」、すなわち強く激しい風が吹き荒れる、過酷な北の国が舞台のその物語は、ごうごうという音とともになおのこと心に刻まれました。
 著者の河﨑秋子さんは、実家である北海道根室市で酪農従業員として働かれ、緬羊を飼育・出荷されるというプロの「羊飼い」。作業のあいまに小説を書かれているそうで、この作品は小説家・三浦綾子のデビュー50周年を記念し2014年限りで設けられた「三浦綾子文学賞」に見事輝きました。
 作品の主人公は、開拓使として北海道に根をおろした一族と、そして彼らと運命をともにした「馬」。馬は一族にとって生活のために必須の、かけがえのない労働力、いわば家族の一員として描かれています。しかし、過酷な自然環境により、人間が生きるために馬の命を犠牲にせざるをえないという状況に見舞われます。
 馬の存在により、その一族の運命が切り拓かれていきます。命と日々、真剣に対峙されている著者だからこそ描き得た、生々しく鮮やかな描写に、息をのみました。命に対する愛情にあふれた視線による、生きることの厳しさに立ち向かう描写の数々を、私と同世代である30代の女性が生み出したことに感嘆し、「生きることとは何か」と考えさせられました。
 TPPの発効で日本の農業は、そして畜産はどうなるのか? 政府の試算も揺れ動くなか、本当の影響は蓋を開けてみるまでだれにもわかりません。ただでさえ後継者不足、原材料の高騰などに悩む多くの畜産農家は、価格競争にさらされれば廃業に追い込まれる可能性も高そうです。
 野で、山で、太陽のもとで多くの生命とともに作業をしてきた営みの歴史を、これからも紡いでいけるように、政府に舵をとってほしいものです。(K)

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 パリで同時多発テロが起きた二日後、フランスはシリアのIS拠点とみられている地域へ、これまでで最大の空爆を実施しました。テロによって亡くなられた、そして空爆によって亡くなられた一般住民の方に深く哀悼の意を表します。テロは許されない行為ですが、空爆に多くの一般住民が巻き込まれているのも事実です。報復の連鎖によって、一番犠牲となっているのは、「戦争」には直接関係のない市民だということを、忘れてはなりません。
 正直なところ、パリのテロ二日後に報復というのは、ずいぶん早い決断だったような気もします。まだ実際の犯人の素性も確認されていなかったのではないでしょうか。同じ頃、シリアからの難民を訓練し、軍人として祖国解放のために帰国させようという、ポーランド外相の発言が話題になりました。戦争から逃れてきた難民にひどいことを提案しているとも思いますが、かつて祖国を失い、欧州各地で傭兵として働き続けたポーランド人の歴史を考えると、民族の歴史の重みを感じます。
 今回特集した集落営農は、その規模や条件だけでなく、地域にとっての意味合いが大きく異なっているように思います。歴史や伝統、風土の違いは、決して広くはない日本の各地にさまざまな特色のある文化を生み出してきました。地域と密着している集落営農はその違いに立脚しているとも言えるのではないでしょうか。みな同じ「集落営農」というシステムだと考えると、その芽をつむことになりかねません。
 高度経済成長期に、多くの人がふるさとを離れ、都会に移り住みました。その子どもたちはまだ夏休みに父母の「いなか」を訪れる機会もあるでしょうが、次の世代ではそれさえもなくなりつつあるように思います。集落営農は、消えつつあるふるさととの絆の役割さえ、担いつつあるようです。都市化、グローバル化だけでなく、テロとその報復によっても、人が故郷を追われなければならない時代に、その果たす役割は想像以上に大きいのかもしれません。
 2016年がみなさまにとってよい年となりますように。(R)

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 TPPが大筋合意されました。土壇場でのニュージーランドの発言などから、暗礁に乗り上げそうな時期もありましたが、アメリカでの大統領中間選挙を前に、日米で一気に合意へ持ち込んだ感があります。聖域とされていた農産物5品目でも、いろいろと妥協が重ねられてしまったようで、今後の政策対応が注目されます。
 貿易以外では著作権などの知的財産権などについても一部報道されていますが、「自由」というよりは企業の権益保護と思われる面が少なくありません。「国益」という言葉が御旗のように振り回されていますが、SDI条項などをみると、大企業の利益=国益と各国政府が考えているのではないかと心配になります。
 TPP合意に熱心な安倍首相は、「経済」優先を連発していますが、現実にこの3年間で国内経済がよくなったかと言えば、首をかしげる人が多いものと思います。だれのための経済なのか、それとも「経済」を謳うのは別の目的達成のための一手段なのか。安倍首相の安全保障あるいは「戦後レジームからの脱却」という考えは、最近の中国などの動き以前からあるものだと思います。表に出る発言が信憑性に欠けるだけに、本当はいったいどこへ向かいたいのか。マスメディアの報道力が弱まっているいま、確かな情報をいかに得るか、国民にとって大きな問題になってきています。(R)

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 安全保障関連法案が可決されました。与党内部からも国民に十分に理解されているとは思えないといった発言も聞かれ、多くの国民が納得できない状態での成立だといえるでしょう。60年安保や70年安保闘争の時に比べると激しさは少なかったものの、法案への国民的な不安の広がりは、逆に大きいようにも思います。法案の内容もさることながら、この間の汚染水対策をはじめとする原発政策や輸出偏重の経済政策、マスコミ対応や国会などでの言動をみれば、国民に真実は語られているのかおぼつかず、現政権の主張に疑念を抱かせているものと思います。
 確かに南シナ海などでの中国の活動、北朝鮮のミサイルや核問題、クリミアとロシア、さらには多くの難民を生み出しているアフリカや中東でのイスラム国問題など、東アジアだけでなく世界中できな臭い話題は事欠きません。しかし、冷戦時代に「抑止力」を求めた結果が、膨大な核兵器の製造につながったことを忘れたわけではないでしょうし、「抑止力」理論はいまさらの理屈に過ぎません。今後「自衛」がまた強引な拡大解釈へ引き込まれないか、ますます日本国民の目と意思表示は重要になるでしょう。
 安保法制のほかにも、今国会では多くの重要法案が成立したり議論されています。そのうちの一つが、農協法です。安保法制もそうですが、農協法改正も冷静に理論的に考えれば「おかしい」、「無理がある」のに、強引に変更が進められている感は否めません。説明はされても肝心なところは言葉を濁し、納得できるだけの材料や論理性には欠けています。
 いや、日本の将来、発展を考えればいずれの法案も必要なんだ、「一般国民」にはわからない、そして言えない世界の情勢、国の状況があるのだ、というのかもしれません。しかし、「わかっているおれたち」を信じろと言われても、簡単に長いものにまかれることなく自らの判断のもとに行動する、そういう自由はまだ「一般国民」にも保障されている国だと信じたいものです。(R)

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今年は例年に比べ、台風の数がずいぶんと増えそうです。7月の台風11号では、私の自宅周辺にも避難勧告が出て、あわてて市の土砂災害警戒区域調査地図なるものを確認しました。2013年の大雨の時にも、夜半に突然防災速報のメールの着信音が響き驚きましたが、その時にはこの地図には気づいていませんでした。見ると私の自宅は、土砂災害警戒区域にかかっていました。
 確かに家はもともと東山の麓の一角を削って建てられ、裏には3メートルほどもある擁壁が迫っています。横手は5メートル以上切り立っていて、さらに1メートルほど下に山からの水の流れが暗渠に流れ込む水路が流れています。土壌も白川砂と呼ばれる白っぽいさらさらした砂地部分が多いので、危険は簡単に予感されます。それでも、結局私は裏山が崩れたときにどうするかを考えつつ、いつも通り山と反対側にある二階の寝室で寝入ってしまいました……。
 家もそうですが農地も、大雨だからといって持って逃げるわけにはいきません。よく大雨の時に田畑の様子を見に行って水害に巻き込まれた方のことが報じられます。リスクを冒してでも様子を見にいかずにはおられない心情が働くのでしょうか。単なる「土地」ではない存在です。亡くなられた方のお気持ちを偲び、あらためてご冥福をお祈りいたします。
 中間管理事業は、もちろん地域との関係を考慮するように配慮されています。一方で、農地と農家との関係も、農業から離れた世代に譲られることによって薄らいでいってはいます。変わる時代の中では、仕組みを変えていかなければいけないこともありますが、それでもできるだけその農地への愛着もいっしょに引き継がなければ、よい農産物も美しい風景も守られないように思います。18歳への選挙権引き下げは、やがて都市部の議員の比率をいっそう高め、結果都市部以外の地域の声は中央に届きにくくなるのかと思います。愛着のなくなった「土地」は、いくら「便利」になっても、決して暮らしよい地域にはならないのではないでしょうか。(R)

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2015年10月号が、9月11日に発売されます。インターネット書店、もしくはお近くの書店でお取り寄せください。

特集●農地を活かす――制度と政策

 第1部 農地中間管理事業を中間検証する

 第2部 何をもたらすか、農業委員会改革

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『農業と経済』電子版ライブラリに、5年分のデータを追加しました。

「最新号」を含む、2001年9月以降のバックナンバーが読み放題です!

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新国立競技場建設をめぐるゴタゴタでは、みごとなばかりの責任のなすりあいを見ることとなりました。少なくとも事態の説明を誰かがきちんとすべきなのでしょうが、間接的な報道ばかりで、誰も事態の全体を確認していないのか、あるいは言えない事情があるのでしょうか。森喜朗元首相は、「行政のシステムが責任を明確にできないようになっているからしかたない」と言っているようですが、とても行政の最高責任者だった人の発言とは思えません。
 一人、安倍首相が「最終責任」は自分がとると発言しているようですが、国の行政の最高責任者であれば当然のことを言っているに過ぎません。むしろ責任よりも権力を主張しているように感じます。現実には、違約金などで消える税金は誰がどう責任をとるのか、それよりもこの無責任行政システムをこのまま放置するのか、いろいろな大きな問題が残されているはずです。オリンピックはお祭り、お祭りに水を差すようなことには手をつけない、これが日本流のお祭り無礼講だというなら哀しすぎます。
 今回本誌では日本農政の基本ともなる基本計画とやはり日本農業の柱、コメの問題を特集しました。すでにある程度TPPは意識されているものの、実際にTPPが締結されれば、この「基本」もどう動いていくかわかりません。規制改革会議などの安倍首相のブレーンは、TPP締結に向かっています。もちろん、決断の「最終責任」は自分にあると安倍首相は言うのでしょう。
 はからずも森・元首相は「みんなで責任をとらねばならない」と発言しました。安倍首相は「責任は自分」と連発していますが、実際にどう責任を取るのか、これまで責任を取ったのか、前回途中で職を投げ出した責任はどうなったのか、判然とはしません。結局、最終責任は「みんな」に戻されることになりそうです。しかし、「みんな」が国民を指すのであれば、それは現日本憲法の本来の姿であり、それに無自覚であることは、国民も無責任だということです。哀しすぎるなどと、他人ごとのように言ってはいられません。(R)

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2014年度の企業純利益が1000億円を超えた社が過去最高の61社、総計でも過去最高を記録したそうです。トップのトヨタや三菱東京UFJなどは円安を追い風にして順調に業績を伸ばしました。この結果が国内全体の経済動向にどう影響していくのか気になるところですが、もう一つ気になる企業の名前がベストテンに入っていました。東京電力です。2013年には謎の黒字化ともいわれましたが、今期は堂々の黒字です。
 純利益は5120億円。燃料費や人件費の削減、作業効率の向上が奏功したものということですが、電気料金を値上げされた消費者から見れば、釈然としないものがあると思います。とはいえ、実際のところは汚染水の問題さえ解決していない福島第一原発の今後を考えると、まだいったいどれほどの費用がかかるか、見通しさえもないのではないかと思えます。その状況の中でこの「純利益」は何に使われていくのか。
 2012年に実質国有化された東電の状況と、JAグループに向けられた政府の「改革」圧力は、対象的なようにも見えます。なにより組合員以外の圧力による改革と協同組合の理念とは矛盾しているわけですが、この点を指摘する有識者は少なくないとしても、肝心のJA組合員からは、あまり声が聞かれないような気がします。悪くするとここが最大の弱点となるかもしれませんが、秋の全国大会に向けて、JAはどういう答えをだすのでしょうか。
 過去最高の企業利益、過去最高の株価、本来なら、国中好景気に沸いてもおかしくないような数字が並んでいますが、国民には実感がないのか、冷静なのか、あるいは懐疑的なのか、かつてのバブル期のような消費の沸騰はみられません。JAの自己改革を成功させるためには、この国民の現状をきちんと把握して、自らのゆくえを決める必要があろうと思います。過半数を超える准組合員を抱えるJAにとって、それはまた、「自ら」の実像をみつめることにほかなりません。(R)

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近くの100円ショップへ立ち寄ると、店の半分以上ががらんと空いていて、見れば近々閉店と書かれていました。仕方なく別の100円ショップへいくと、そこはいつの間にかチェーンのスーパーになっていました。ローソンストア100が大幅縮小されているので、最初の店はそのための閉店だと思います。次の店は個人経営だったはずなので、独自の判断をしたのでしょう。
 円安の影響なのかは定かではありませんが、1ドル80円から120円への変化は、販売価格を100円から動かせない商品では商売を続けるのはきついだろうことは推測できます。おなべや包丁をはじめ、そもそも100円で売っているのが信じられないくらいでしたから、むしろまだ商売を続けられている店の方が不思議なくらいです。100円ショップに限らず、ほかの食品類もこれからじわじわと値上がりが広がっていくようですから、いまのところ円安は私の財布にはマイナスでしかありません。
 安倍首相は今春の春闘での大企業の給与アップを見て、中小企業にも賃上げを要求しています。しかし、実際に円安で業績の改善している大企業とは違い、中小企業まで業績が改善しているようには思えません。ない袖は振れないというより、もし振ったら企業そのものが存続できないような状況が続いているのではないでしょうか。
 円安政策が決して悪いわけではないでしょうし、おかれた状況にうまく対応していくことも大事ですが、日本の工業製品や輸出拡大を狙う農産物も、すでに現在の日本は「値段」の差で売る商品を作る方向ではないように思います。むしろ高くても売れる商品を作る、そのためには何が必要か、見失わないことが大事ではないでしょうか。(R)

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本誌が発売になる頃、各地では統一地方選前半の投票日が間近になっている頃だと思います。昨年12月の衆議院選挙は、最低の投票率という国民の責任を放棄したような数字だっただけに、この選挙の数字も気になります。低投票率の地域は、住民の地域への関心が薄いと思われてもしかたないのかもしれません。地域のゆくえを決める選挙に、まずはどれだけの住民が意思を表明するのか、重要なところだと思います。
 「消滅可能性都市」が提言されるまでは、地方に関心がないように見えた安倍政権ですが、アベノミクスの成果がいまひとつ見えず、地方での選挙に黄信号がともるなかで、それまでのアベノミクスから目を地方へ向ける、渡りに船の提言であったといえます。それまでとは一転したように、「地方の活性化」に向けた政策がまとめられていきました。
 しかし、ふくらむ財政赤字をかかえてどれほど地方に権限と財政を渡せるのか。1月に予定されていた個人向けの新型窓口販売の国債は需要が見込めず、販売が停止となるような状況では、2020年の基礎的財政収支の黒字化には暗雲が立ちこめています。実際のところ、地方のアイディアや活性化なしでは、ほんとうに日本の財政は手詰まりとなるところにきているということかもしれません。これがうまくいかなければ、増税につぐ増税ということも予想されます。
 春闘では大幅賃上げがあったので、経済も好転するという人もいるでしょうが、2014年の貿易赤字は過去最大。官製相場で上昇した株をもつ投資家と円安で利益を伸ばした一部輸出関連産業以外は、むしろ状況が悪くなっているのが現実ではないでしょうか。安倍首相は首相が「わが軍」とよぶ自衛隊に予算をさらにつぎ込むようですから、国の財政に余裕のあるはずもなく、自分の地域は自分で守る覚悟ができないと、「消滅可能性都市」ならずとも存続が危ぶまれます。地方選の投票率が、まずは地域のやる気のバロメーターという気持ちで考えてみてはどうでしょう。(R)

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2015年4月より、『農業と経済』の定期購読者を対象に、株式会社フライングラインの運営する「YONDEMILL」というサービスを用いて『農業と経済』のバックナンバーをストリーミング形式の電子書籍として公開いたします。

また、同サービスで、論文単体の販売を行う予定です。

『農業と経済』へこれまでご執筆いただいた方で、公開・販売について許可いただけない方はお申し出くださるよう、お願い申し上げます。

 

連絡先 昭和堂編集部 電話075-706-8818

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「がんばれば、報われる」、そう信じてがんばっている人は多いと思います。社会を支えているのは、そんな人々のがんばりだと思います。いくらがんばっても報われなければ、さらにがんばろうとはなかなか思えません。大きな問題は、それぞれの「がんばり」が、なかなか公平に評価されないことです。現実には「がんばり」というよりも「成果」でしか評価されないことの方が多いのかもしれません。さらにやっかいなことに「がんばり」には個人差があり、「成果」との間には落差もあります。現代社会では、がんばったのに成果が出ず報われないことも多いのではないでしょうか。
 『21世紀の資本』で話題になったピケティ教授によれば、資本が資本を産み、格差の広がる可能性が指摘されています。がんばらなくても資産が膨らむ人がいる分、がんばっているのに報われない人が増えていく時代が進んでいるともいえるでしょう。生産や労働によらない金融資産の増加が金融緩和によって進めば進むほど、お金にお金が集まる状態が進んでいるように見えます。
 協同組合組織はいってみれば、がんばっているのになかなか報われない人にとって頼りになる、いや、みずからの手で少しでもその成果をより稔りのあるものにするための組織です。今回のJA改革でJA全中は協同組合組織からは外れ、一般社団法人となることになりました。監査という技術的な問題も大きいですが、協同組合ではなくなったことがどういう意味を持つのか、今後たいへん気になるところです。
 安倍首相が「がんばれば、報われる」「美しい国」の建設を心から信じ、願っているとして、それは具体的にどんな社会なのか。予算委員会で首相席からヤジをとばす姿とは、大きなギャップがあるようにも思います。一つの巨大な民間組織が、致命的な問題を起こしたというわけでなく、政府によって変容を迫られたことを冷静に受け止めて、どんな具体的な像が見えてくるのか、みずから判断することが求められているのではないでしょうか。(R)

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フランスの新聞社襲撃事件を受けて大統領が「テロとの戦争」と発言したことで緊張が高まった矢先、「イスラム国」による日本人人質事件が起きました。無事解放されることを祈っています。安倍首相の中東歴訪の真っ最中、各国への支援を表明した直後で、タイミングを狙われていたとも思えます。石油資源では日本にとって欠かせない地域ではあっても、日本人にとって中東はあまり馴染みがありません。ただ、中東やイスラム文化の土壌についての知識が一般にはほとんどないとはいえ、もし政治家が外交の場で自分のパフォーマンスを先行させていたなら、迂闊のそしりは免れません。
 人質と身代金の対応をめぐって、自己責任だとか人道支援であることをアピールすべきだとか、さまざまな意見が飛び交っています。意見を分裂させることがテロの狙いとわかっていても、また自己責任論と要求の理由とは切り離して考えるべきだとしても、人命がかかると選択は難しくなります。いくら大義のある戦争であっても、人の命の重さが変わるわけではありません。そして、人の命よりも重要なものを守るという選択も公然とおこなわれます。
 20世紀は科学技術が急速に発展し、農業もそのおかげで飛躍的に生産量を伸ばしました。しかし一方で急速な科学の発展は、核を筆頭に多くの人命や環境を破壊してきました。スマート農業はその反省にも立って、単にIT技術を利用した効率一辺倒ではない環境負荷に配慮した科学技術の応用を図るものであってほしいと思います。
 しかし、今のところ宗教や主義、主張が多くの悲劇的な対立にいたることを避けられないように、農業と科学、あるいは農業と効率の間でも簡単には解決できない溝はあるように思います。目に見えない主義や主張、あるいは技術が目にみえるヒトやモノに決定的な影響を及ぼすのは不思議なことですが、それはヒトがヒトである証、そしてヒトであるからこそその解決を探り、前に進んでいくのだと思いたいものです。(R)

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突然に持ち上がった衆院の解散総選挙。あれよあれよという間に現実となり、本号が並ぶ頃は選挙戦も終盤に突入していることと思います。現時点ではまだ公示もされていないので、どういう主張がされているかは定かではありませんが、少なくとも大きなポイントの一つに「消費増税先送り」があがっており、「アベノミクスへの信任」を問う選挙として位置づけられているように思います。
 もともと消費税増税の時期については、景気の動向をみて判断するいわゆる「景気条項」がありましたので、景気の状況が芳しくなければ選挙によらずとも先送りは十分判断可能です。しかし首相にしてみれば、増税を先送りをするには、自らこの間の経済政策についてマイナス評価をしなければならず、それは政権にとっては自殺行為にも等しく、それを避けるためにも選挙にする必要があったのでしょう。2閣僚の同時辞任より、アベノミクスへ自らマイナス評価をつきつける方がダメージは大きいと思います。いわば消費増税先送りを人質にとったアベノミクス踏み絵選挙ととれます。
 消費税問題でかすんでいますが、「地方創生」はこの先いったいどうなるのでしょうか。現政権での政策の是非はともかく、せっかく地方へ目が向けられた矢先の選挙でまた振り出し、いや、忘れられてしまうようなことがあってはならないと思います。正直なところ、消費税については争点にせず、「地方再生」をめぐる判断と具体案を、政党や候補者にはきちんと示して欲しいと思います。
 アベノミクスの第1の矢、異次元の金融緩和というデフレに対する処方は劇薬です。財政再建が進まぬなか、円に対する信認を確保するには、経済条項をはずして増税を確定する必要があると判断したのでしょうが、これもまた劇薬だという気がします。この間の政策の結果をみれば、日本再生には劇薬を使い続けるよりも、むしろ地道に地方の活性化をはかることの重要性が明らかになってきているのではないでしょうか。
 この選挙での一人一人の投票結果の先にある一年が、良い年となることを願っています。(R)

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 トヨタやパナソニック、東芝といった大手の企業が異業種である農業への参入を試み、アップルが日本のある農園に関心を示すなど、他産業からの熱い視線が農業に集まっています。これまでは、比較的単純な異業種からの農業への進出でしたが、自らの持つ技術力を活かした農法やシステムを携えて参入しようとしている点が、これまでと違うように思います。また、これらの企業は日本の農業という範囲ではなく、世界的な食料不足やグローバル化という観点に立っていることも特徴的でしょう。  もちろんこれらは企業にとって「ビジネスチャンス」であるからこその参入です。同時に受け入れる地域にとっても、活性化のチャンスであるのも事実でしょう。その成功の鍵の一つは、やはり地域と参入企業の相互理解や協調がしっかりできるかどうかにあると思います。優秀なシステムも、たとえば水の利用一つで稼働さえおぼつかなくなります。これを資本の力で強引に解決しようとすれば、むしろ問題は大きくなるような気がします。  普及員は参入企業にどう向き合うべきなのでしょうか。もちろん、要請に対しては、参入企業であろうと地元農家であろうと、平等に対応しなければなりません。しかし、ごく狭い範囲での「経営」に対しては一律に情報を提供できても、長期的な視野に立った対応を提案するには、それぞれの個性や特性、置かれている状況などを考慮しないと難しいでしょう。経営側がすぐに成果の出るような提案を求めてくる場合、農業がそういうものでないことを理解してもらわねばなりません。  他業種では、ここまで地域と密着した判断を求められることはあまりないのではないでしょうか。同業で得た有益な情報を他社に流すことは、敵視さえされるでしょう。「普及員」という存在は、農業という活動に特異な性格、条件から生まれているといえます。他産業で当たり前ともいえる「競争」の概念をそのまま農業に持ち込むのは危険です。(R)

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今後の日本の米づくりに大きな影響を与えるであろうTPPについて、相変わらずその具体的な内容はまったく聞こえてきません。しかし、その動向とは関係なく官邸主導の方針は、農政に大きな変更を迫っています。はたして来年決まる新たな基本計画は、どこまで踏み込んだ「変革」が盛り込まれることになるのでしょうか。
 揺れ動いている農業界とは裏腹に、経団連は5年ぶりに政治献金を復活させることを決めました。一部のメディアでは、自民党の事務局幹部が、献金金額を50億あるいは100億にすべきという、要求ともとれる発言をしたことが書かれています。そこには、アベノミクスによって企業が収益を高めているという政治家の認識が強くあると思いますが、政財界の癒着を公言してはばからないようにしかみえません。さらには、景気回復のためという膨張予算のかげで、未消化の工事の増加といったことも浮かび上がっています。
 実際のところ、庶民感覚では残念ながら景気が上向いているということは実感できません。ちょっとした買い物などでも、消費税込みの値段を見ると「高い」と意識され続けています。政府は景気は回復している、未消化工事は現在進行しているといったことを並べますが、現実はいったいどうなのでしょうか。政治家自身が、本気で現実をそうみているとも思えないのですが。
 本来ならば少しでも真実に近いものを示してくれるはずの新聞などのメディアも、このところの朝日新聞の誤報騒動をめぐるやりとりをみると、新聞界全体がものごとの本質に近づいて報道しようとしているようにはみえません。放射能汚染水問題での「完全に管理下にある」という安倍首相の発言以来、どうもすべての政府の発表が疑わしく思えてしまうだけに、新聞業界の現状は大きなマイナスです。まさか戦時の「大本営発表」ではないでしょうが、真実をみるためのまなざしが必要となっています。コメをはじめとして、きちんとした検証にもとづいた、あらたな基本計画が打ち出されることを願います。(R)

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広島での水害をはじめ、今年も各地を大きな水害が襲いました。犠牲になられた方々のご冥福をお祈りし、被災された方々にお見舞い申し上げます。
 大きな土石流災害となった広島の八木地区は、古くは水害に因んだ地名がついていたといわれています。多くの地域で同じように古い地名が新しい地名に変わっていますが、それとともに地域の知恵が途絶えてしまうのは、たいへん残念なことで、過疎化や都市化の進行にともなって起こっている、全国的な「地域の知恵」の損失とも見て取れます。
 一方で、全国での空き家の数は昨年度に800万戸を突破。約7軒に1軒は空き家ということになります。耕作放棄地と同様、放置された空き家は、各所で問題化しています。対策をとる自治体も出てきていますが、個人の所有権に関わるため、思うようには対策が進まないのは、耕作放棄地の問題とも重なります。すでに所有者に連絡が取れなくなったような土地が、全国ではどのくらい生じているのでしょうか。
 こういった空き家や耕作放棄地の増加とは裏腹に、都心部の高層化や新規住宅開発が、減ったとはいえ、なくなっているわけではありません。住宅や土地を必要とする人と現物の所在のミスマッチは、拡大しているともいえます。この問題は、人口増減の地域差や収入の格差、グローバル化の問題などと通底する根本的な問題を示唆しているものと思います。
 本号で特集される環境や生物多様性といった問題も、無縁ではありません。しかしこれらの問題を根本から一気に解決するのは、おそらく想像を絶する犠牲を生じ、現実的ではないのでしょう。そうであればこそ、人の知恵や努力が活かされるべき問題です。特に自然環境に強く関わる部分では、その風土や歴史を知ることは大きな要素です。新しい知識、新技術を活かすためにも、地域に根ざした知恵をはぐくみ、工夫していく人材やネットワークの重要性が増しているのだと思います。(R)

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中国の食品加工業者が、使用期限をはるかに超える鶏肉を日本へ輸出していた事件が世間を騒がせています。大手のファーストフードチェーンやコンビニを巻き込んだことが、波紋をより大きくしていることは明らかです。消費者の反応は、一方で怒りや驚き、一方で「またか」や「やっぱり」という想定内であることを示すものに分かれています。怒りや驚きは主に大手の企業に、またかややっぱりは中国企業や製品の値段に主に向けられているものと推測できます。
 この中国企業は、アメリカの大手食肉グループの現地法人で、工場はHACCPを導入しており、仕入れ先業者は視察もおこなっていました。仕入れ先のCEOは「少しだまされた」と被害者的な発言をしているようですが、事件に絡んだ大企業の責任者としては、このことを軽く見ていたことを露呈してしまったように思います。これまでの中国の食産業の諸事件からは、相当慎重な対応が求められたはずです。最終製品への「安心」感が、大きく損なわれたのは間違いないのではないでしょうか。
 工場の従業員はもちろん、卸先のこのCEOや関連企業の役員や従業員は、はたしてこれらの食品を食べていたのでしょうか。いや、本人でなくとも家族や親類が食べる姿を「少しだまされている」くらいの気持ちで見ていられるのでしょうか。以前日本でも農家の子どもが自分のところの畑でとれた作物を食べているのを見て慌てて止めたという話がありました。赤の他人は平気でも、家族や知人は別、残念ながらそういったことはありがちです。
 本号特集の「家族経営」について、その是非は一概にはいえないものと思います。ただ、顔の見えないグローバル化とは別の価値観や倫理観がそこに生きていることは間違いないのだと思います。その価値観がよいか悪いかはわかりませんが、少なくともその価値観はその「家族」のものとして外部にはみえてくるということはあるでしょう。農業や食品関連産業で、このことはどういう役割を果たすのか、大きな鍵を握っているようにも思います。(R)

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東京湾に不審な外国船が現れ、警告を無視して東京に上陸したら、政府はどんな対応をするのでしょうか。相手が攻撃をしかけてくるまで、遠巻きに見守るのでしょうか。実際には武装云々関係なく不法入国・不法上陸として、逮捕するなど一定の対応がとられると思います。これが東京でなく魚釣島や竹島ならば……。魚釣島では逮捕、竹島では看過、実際のところは法律のグレーゾーンではなく、政治的判断のグレーゾーンであり、裏を返せば責任問題のグレーゾーンなのではないでしょうか。
 この問題と憲法問題は別問題ですし、さらにはその時の政権の解釈によって180度現実への対処が変わるような「憲法」とは、いったい何なのでしょうか。グレーゾーンも憲法解釈の変更も、「現実」への対処ではなく、法的整備に名を借りた判断の押しつけであり、また、政治的判断の責任を法律や憲法に押しつけようとする行為に思えるのですが。憲法を修正するとしても、このようなやり方はおかしいと思えます。解釈で憲法の内実を変えてしまうような無責任なプロセスで国の方針を語る政治家は、私には信用することはできないように映ります。
 同じ政府がJA改革も検討しているわけです。一方で地域単協の自立を言いつつ、他方で企業の農地取得のハードルを下げようとするあたり、地域やその住民のことを考えた提案というには矛盾しているようにも思います。そればかりでなく、もしこの綱引きが単にJA中央会と一部経済界との間で行われ、結局はJAの「組織」を守るためにTPPや農地法での妥協が進むようなことにでもなれば、地域はますます置き去りになるでしょう。農業と他産業というだけでなく、中央と地方の綱引きでもあるように思います。
 いや、どうせ遠くない将来には人口も半減し、いずれ大都市以外は移民や外国人労働者のまちになるのだから、中央に住む「日本人」の利益を守るには、思い切った資産の集中が必要なのです。それが「国益」なのです……。そんな声が聞こえてくるように思えるのが、私の幻聴であることを願っています。(R)

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ベクテル社という企業を知っている方はどのくらいいるでしょうか。私も知りませんでしたが、世界最大級の企業であり、株式非公開のいわばファミリー企業だということです。ロックフェラーやロスチャイルドといった財閥の名は耳にすることはあっても、ベクテルとはどんな会社なのか、少なくとも日本ではあまり聞きません。興味のある方は調べてみてください。ちなみにロックフェラーとロスチャイルドでFRB(アメリカ連邦銀行)株式の過半数を所有しています。これも知りませんでした。
 これらのファミリー企業傘下の企業も、当然法人化されており、基本的には株式会社の形態をとっています。巨大な影響力をもつ世界のファミリー企業と農業の法人化を同列で議論するのは無理でしょうが、そこにはなんらか「法人化」のメリットとして共通するものがあるからこそ、日本の農政は農業の法人化をすすめているものと思います。それは一体なんでしょうか。
 特集でも分析されているように、一口に法人といっても、生産法人や農事組合、そして株式会社と、特に農業の場合は目的や形態の違う法人が一絡げに「法人」といわれ、混乱しているように思われます。特に近年の法人化は最初の目的からはシフトして、外部からの企業参入を踏まえた、いってみれば他産業での法人化=株式会社化のイメージが色濃くなっています。このシフトは、いってみれば目的の変化もあらわしています。
 もちろんTPPなど、近年のグローバル化に対応しようという意図が働いているのでしょうが、単純に利益の追求だけしていればよい時代ではなくなっているはずです。一方でベクテルのような巨大な利益を上げているグローバル企業がなにをおこない、利益はいったいどこへいっているのか、実体は杳としてしれません。そんな巨大企業が引っ張るグローバル化の現実も踏まえて「法人化」を考えないと、特に農業のような直接人の健康や生命に関わる産業では、取り返しのつかない事態がおこるように思います。(R)

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 『農業と経済』誌では創刊80周年を記念して、懸賞論文を募集します。
 審査対象は、現状分析にもとづいて日本の農林業・農山村の将来展望を提案する意欲的な論考です。
 現在、日本の農林業は、食料安全保障の不安、農林労働力の減衰、耕作放棄地の拡大、食品安全、再生産保証のない農林産物価格、農山村過疎化の進行など、相互に関連した数々の問題を抱えています。

 こうした難局を乗りこえるべく、冷静な分析力をもって現状を理解し、熱い志をもって未来に向けた抜本的な解決の道を指し示す、渾身の一作をお待ちしております。

 農林業界のオピニオンリーダーとしての本誌にふさわしい、現実に根ざしながらも夢のある論文をお寄せください。


◆応募規定
1)応募資格:40歳以下の『農業と経済』読者
2)応募論文は本人のもので、かつ未発表のものに限ります。グループによる共同執筆も可。
3)総字数は10,000字(原稿用紙20~30枚)程度。
4)A4版白紙用紙でワープロ使用。
5)1,000〜1,500字ごとに小見出しをつけること。
6)注や文献の表示などについては、本誌掲載の論文を参考にしてください。

◆表彰と賞金
優秀賞 1本 賞金:20万円
奨励賞 数本 賞金:3万円

◆応募期間・発表
応募期間 平成26年9月1日〜11月30日 *当日消印有効。
発表   平成27年4月11日 入選者のみ本人に通知の上、本誌(2015年5月号)上にて公表いたします。(文量が一定以上の場合、分割掲載となります。掲載にあたっては、データでの入稿が必要です)

◆審査方法
本誌編集委員による一次内容審査の後、審査委員による最終審査をおこなう予定です。

◆応募方法
内容を要約したレジュメ(A4一枚程度)と印刷済みの本編を連絡先明記の上、下記に郵送。

◆その他
応募作品は返却いたしません。(作品の所有権は主催者に帰属いたします)
入選作品の著作権を含むすべての著作権利は、主催者に譲渡継承されます。



【応募先住所】
〒606-8224
京都市左京区北白川京大農学部前
株式会社昭和堂内『農業と経済』編集事務局宛
[主催]『農業と経済』編集委員会

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ソチ・オリンピックが終わるのを待っていたかのように、クリミアで領土問題が発生しました。すでにロシアはクリミアをロシアへ編入していますが、欧米諸国はそれを認めず、ロシアへの経済制裁で圧力をかけています。しかし、エネルギー供給の3分の1をロシアに頼るEUは、なかなか思うように強い態度にでられないようです。
 このクリミア半島からバルカン半島にかけては火薬庫とたとえられるように、歴史的にも国際的な問題の火種が尽きません。遠く離れた地域の問題なので日本人にとってはピンと来ないかもしれませんが、ロシアの反対側の国境、つまり択捉島以南の北方4島は、同じような状況にあることを忘れてはなりません。奇しくもクリミアのヤルタで、第2次大戦後の処理について英米ソが話し合い、そこで北方4島はロシアに帰属することが密約されました。国際法上無効な密約であっても、現実にはロシアが実効支配しています。もしソ連が北海道を占領していたら、日本はいまごろどうなっていたでしょうか。
 国民の生活基盤の一つである「土地」でも多くの紛争があるように、生活基盤となる食糧やエネルギー問題も、数多くの問題や国際的な駆け引きがグローバル化によって激化しています。食の安定供給を考えるうえで、偽装、誤表示や毒物混入、そして目に見えない防腐剤処理など、その安全を担保することもより重要となってきています。そしてこの問題は食と農が私たちから離れれば離れるほど、より深刻な問題となる、そういう問題なのだと思います。(R)

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1934年の4月、本誌は創刊されました。この4月でちょうど満80年。当時京都帝国大学で教鞭をとっていた橋本伝左右衛門先生が、本誌創刊に尽力されたと聞いています。橋本先生は、明治34年に東京帝国大学を卒業された後、2年の海外留学を経て京都帝国大学に着任。その後、農業経済学、農業経営学、農政学などを23年にわたって教えられたといいます。
 本誌1977年9月号に当時の本誌編集人である熊谷三郎氏は、本誌創刊にあたって橋本先生が「日本農業の発展の指針として単なる理論に偏せず、かといって通俗に堕せず、しかも平易明快を旨としたユニークな専門誌をつくりあげてみよう」という趣旨をお持ちだったと書いています。創刊の趣旨をあらためてかみしめる思いです。
 本号の特集は、橋本先生の衣鉢を継ぐ京大の関係講座の各先生方にご論考をお願いしました。多くの読者の方々には、少しいつもと違う特集と映ったかもしれません。しかし、いつもの特集を支える岩盤の一つが本号特集に現れているものと思います。これらの先生方をはじめ、歴代編集委員、ご執筆いただいた方々、多くの読者の方々や関係諸機関のご協力、ご愛顧によって、特定の機関に属さない独立した雑誌としてこれまで続けてくることができました。
 書籍、とくに月刊誌にとっては、農業を取り巻く状況に似て非常に厳しい時代ですが、80年という歴史の重みを感じつつ、次は100年を目指して歩みを進めたいと思います。本号の特集は、その重みを思い出させてくれるとともに、新たな時代に向けて本誌がさらに歩みを進める必要があることを、示してくれたような気がします。(R)

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本誌発売時には、脱原発が大きな争点となったであろう東京都知事選は、すでに結果が出ているでしょう。この原稿は都知事選の公示以前に書いていますので、どういう結果になったかは現時点では知るよしはありませんが、日本の今後を占う意味でも、充実した議論が展開されたであろうことを願っています。
 最近では、原発問題にたいして「安全保障問題」であるとする発言も多く報道されるようになりました。確かに核の脅威は、日本は十分に知っていますし、抑止力という考え方も一定の認知はあるでしょう。近年の中国、韓国、そして北朝鮮との関係を考えれば、自国の安全をどう守るかは、重要な課題にも思えます。
 同じように、TPPについても、安全保障問題の一環として位置づけるような発言が増えているようです。TPPはいまやアメリカの世界戦略の一つであり、「同盟」の強さをアピールするよい機会なのかもしれません。しかし、原発やTPPは日本の安全保障に実際はどの程度関係のあることなのでしょうか。アメリカの同盟強化は、自国の安全や経済的繁栄のためであり、たとえTPPや原発を推進したとしても、それはそれ、これはこれ、日本の安全保障が確約されるものではありません。なにかで恩を売れば、別のことで返してもらえると考える、非常に日本的な発想による「期待」、あるいは思い込みに過ぎなかったり、さらには安全保障を隠れ蓑にした推進戦略という可能性さえ感じます。
 TPPや原発の問題と安全保障が実際どれだけ関係があるか、冷静に世界の状況を見きわめる必要があるでしょう。敵を知り、己を知れば百戦殆(あや)うからず……、あらためて各国が自国の産業とグローバル化をどう考えているか、そこに「政治的な意思」がどう働いているかをより正しく知って議論することは、今後の日本の対応を考えるうえでも、また交渉をより有利に進めるためにも、そして関係国全体を真に発展させるためにも、必要なことだと思います。(R)
 

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2014年は、日本の農業と農村にとって、どんな年となるのでしょうか。米政策や経営所得安定対策の見直し、「農林水産業・地域の活力創造プラン」さらにはTPPと、農業や地域に大きなインパクトを与えるであろう政策や国際交渉が次々と結論を出そうとしています。現時点ではその行方は不明ですが、本号が店頭に並ぶ頃には、いくつかの内容ははっきりしていることと思います。
 今回の特集では、農政の考え方やゆくえを知るために、林大臣にご登場いただきました。また、少しでも日本農業がよい方向に向かうために座談会と各論考でそれぞれの専門家にさまざまなご提案をいただきました。政府のプランやTPPの行方が明確にならない時期の座談会やご執筆となり、非常に難しい部分があったことと思いますが、各方面から大変なご協力をいただき、深く御礼申し上げます。
 転じて国外では、中国の防空識別圏設定問題やアメリカのデフォルト懸念、台風や異常気象ともいえる天候による被害など、影響が地域にとどまらず広く拡大しそうな問題が山積しています。グローバル化は、世界の結びつきを強めているようにみえますが、国益を最優先することで、国同士の利害対立はかえって先鋭化する方向であるようにもみえます。これまでの「グローバル化」ははたしてほんとうに「国益」になっているのでしょうか。
 2014年が、みなさまにとってよい方向に舵取りされることを願っています。(R)

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 現在、台風27号と28号が日本本土に迫ってきています。台風26号で多くの犠牲者を出した大島では、まだ行方不明の方々の捜索が続き、再度の大雨や暴風での被害が懸念されます。26号で被災された方々にお見舞い申し上げますとともに、新たな被害が出ないよう、心から祈念します。
 京都も、先の台風18号の際に観光地である嵐山の状況はニュースなどでもたびたび報道され、その後の復旧作業も映し出されました。その一方で、水に浸かってしまったたんぼなど、各地のその後はあまり報道されません。現実には多くのたんぼが復旧の見込みのないまま、いまだに放置されています。
 長引く不景気で、世間の関心が経済再生に向いているのであまり注目されませんが、10月半ばまで真夏日が続いた今年の天候は、地球温暖化が確実に進行していることを感じさせます。杞憂であればよいのですが、温暖化は徐々に進行していくとしても、生態系にとっては「閾値」を超えると突然の大変化に襲われるのではないかと考えてしまいます。
 本号で特集された林業は、温暖化進行に対するバッファとなる森林やその生態系にとって、重要な鍵を握っています。また、水害の防止や今後世界的に見込まれる水不足に対する水資源の涵養にも大きな役割を果たします。しかし、都市部に人口が集中する現代では、森林の変化はややもするとなかなか目に入りません。目の前の不景気や災害に目はとらわれがちですが、その裏で徐々に進行していく大きな変化に対して、少なくとも先進国は20世紀にずいぶんと学んできたはずです。自然の変化を感じるためにも、もっと山や森に出かけてみたいと思います。(R)

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2020年、オリンピックの東京開催が決まりました。同時にパラリンピックも開催されます。パラリンピックという名称は、実は日本人の造語で、前回のオリンピック東京大会で同時開催された障害者の競技大会の愛称としてつけられました。
 1964年の東京大会は断片的にしか覚えていませんが、聖火リレーを学校の授業で応援に行ったり、日本の女子バレーチームが東洋の魔女と呼ばれていたこと、そしてテレビがまだ白黒だったことは妙にはっきりと覚えています。あれから約50年、今度の東京大会がどんな記憶となって残るでしょうか。
 もしかすると今回の東京パラリンピックには、本誌特集で登場する方々の関係者や関係施設から、大会に参加する方がでてくるかもしれません。農業が障害をもつ方々やその周囲の方々にとって支える力となることを願っています。以前重度障害児施設を取材したときに、看護師などの施設職員が、次々と腰痛や頸腕症候群になると知りました。障害を持つ方本人もたいへんですが、その周辺の方々のご苦労も計り知れません。
 オリンピック招致のプレゼンテーションで、安倍首相は福島の汚染水問題はコントロール下にあると宣言しました。実際の現地からの報道を見る限り、むしろどうしたらよいかわからない、混迷状態にあるように思えます。格差や社会的排除が大きな問題となっている現代社会にあって、2020年の東京大会が、みせかけだけではない日本社会のほんとうの豊かさを示せる場となることを願ってやみません。
(R)

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 ガラケーならぬガラ軽という言葉が囁かれています。ガラケーはガラパゴス携帯の略で、世界標準から外れて独自の進化をした日本の携帯を指す言葉、それをもじってガラ軽は日本独自規格の軽自動車を指す言葉です。TPP交渉で、アメリカ自動車産業界が日本の軽自動車規格の廃止を求めているのと符号します。
 出版界では、ときおり「日本人論」がヒットします。古くはルース・ベネディクトの『菊と刀』、近年では内田樹氏の『日本辺境論』。国や地域に独自性があるのは当然で、その地域や国の風土や伝統に育まれてきたものであれば、その独自性は尊重されるべき可能性が高いと思われます。しかし日本人はその独自性を恥ずかしいものと感じるようです。
 「グローバル化」や「貿易の自由化」といった言葉の裏には、「世界の標準化」なりグローバルスタンダードを無批判によしとする流れがあるように思います。いったいその標準化はいつどこでなされているのでしょうか。2010年のIMFのデータを元にした数字では、世界のGDP上位100位以内の40%以上が「企業」です。ノルウェイや南アフリカといった「国家」よりウォールマートやロイヤルダッチシェルの方がGDPではすでに大きな規模となっています。
 地域に根ざした「国」という存在より国境を越えた存在の企業が影響力を持つようになるとき、世界の標準化は果てしなく進むのかもしれません。巨大化した「企業」は、人の手に余る、あるいは制御のできない存在になってしまうのではないでしょうか。TPPはそんな流れの中で各国に「世界標準化」を迫るものです。ガラパゴスは決して恥ずかしい存在ではありません。(R)
 

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『農業と経済』2013年9月号より、当ホームページで立ち読み機能が使えるようになりました。該当号の目次や特集記事の冒頭をネット上で無料でみることができます!!

ご注意:ご利用になる場合は、Google Chrome 3.0 以降、Safari 3.1 以降、Firefox 3.5 以降、Opera 10.5、Internet Explorer 9が必要です。

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参院選が終わりました。大方の予想通り、自公の圧勝、民主党は惨敗し、第三局勢力は力を結集するどころか分散して、敗北ともいえる結果に終わりました。争点らしい争点は浮上せず、投票率も低調でした。とはいえ、経済再生以外にも財政や公務員改革、選挙制度や議員数削減、原発問題や震災復興、年金や消費税、そしてTPP、さらには憲法改正と、重要な課題は目白押しで、国民の不安はくすぶり続けています。
 選挙の余韻もさめやらぬなか、ついに日本がはじめて参加するTPP交渉がはじまります。本誌が店頭に並ぶ頃には、なんらか報道されているのか、秘密交渉というルールが阻んでいるのか。およそ透明性が求められる現代の交渉とは思えない状況ですが、いったいどんな進展をみせるのか、十分に注視せねばなりません。日本政府から「聖域」を守る決意はたびたび表明されていますが、本特集でも書かれているように落とし穴は他にも少なからずあるようです。また、交渉前からすでに決定的ともいえる妥協を呑んでしまっているような状況で、いったいどれだけのことができるのか。
 しかし、少しだけ幸いなことは、韓国やニュージーランドといった、アメリカとの条約締結によって何が起こったのかを知る手掛かりが存在しています。見えない交渉経過に一喜一憂せず、見えている事実から何を学べるか。
 ほんとうに国際社会全体、人類全体が発展・繁栄するためにはなにが必要なのか、日本に限らず人類の「平和力」が問われているといってもよいのではないでしょうか。

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「がんばって、がんばって、がんばって、てっぺんにたどり着きました」、80歳でエベレスト登頂に成功した冒険家、三浦雄一郎さんが登頂成功時にご家族に伝えた言葉です。三浦さんはこれで世界最高齢でのエベレスト登頂成功をなしとげたわけですが、来週には81歳のネパール人が同じくエベレスト登頂を目指すそうなので、三浦さんひとりが特別ということでなく、努力すれば多くの人に可能性があるということで、これもまた勇気を与えてくれることだと思います。
 冒険家や探検家は、自ら進んで大きなリスクに立ち向かうわけで、家族や周囲の人は気が気ではないでしょう。おそらくは、当人以上に腹をくくって協力しなければ、こういった偉業はならないのかもしれません。そういう点では、転職や大きなプロジェクト、農業では大規模な施設への投資、あるいはIターン、Uターンの時なども、同じような状況はあるといえるのかもしれません。周囲の協力や心の支えがあるとないとでは、結果はずいぶん違うものになるように思います。
 東日本大震災の直後、パニックをおこさずに協力し合う被災者の姿は、全世界から賞賛されました。振り返れば1970年代に言われた「一億総中流」という言葉は、揶揄的に使われていた印象を持っていますが、当時の高度経済成長が総じて国民全般に享受されたのは、今になってみると世界的に見て珍しいことだったのではないかと思えます。被災時と高度成長期の姿を安易に重ねることはできないにしても、「日本型」の社会構造を映し出しているように思えます。「日本型」の負の部分にとらわれすぎず、冷静に評価すべき時期がきているのではないでしょうか。
 「記録更新が目的でなく、エベレストの山頂から核廃絶など世界平和を訴えたい」、81歳で三浦さんの記録に挑むネパール人男性の言葉です。アメリカ型の競争による「グローバル化」ではない、つながりを大事にする日本型の国際化、「競争」以外にも高みを目指せる新たな方法は案外近くにあるのかもしれません。

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日本のTPP交渉への参加が、参加各国の閣僚会議で承認されました。アメリカ議会の承認や、今後の交渉がどうなるかという根本的な問題はありますが、TPP締結への流れはさらに加速しそうです。それに歩調を合わせて、産業競争力会議からは、企業の農地取得の自由化や出資規制の緩和といった、「日本農業の競争力強化」のための提言がなされています。また、大規模経営体からは輸出機会の増大や、海外での生産といった「攻め」の声も聞こえてきます。今後の交渉の行方から目を離せません。
 ところで、P4協定という言葉はご存じでしょうか。TPPの原締結国四国による締結協定で、いってみればTPPの基礎をなすもののはずです。しかし、不思議なことにこの全文は公式には翻訳が公開されておらず、第三章のみ農水省が仮訳として紹介しています。このところ日本政府は、アメリカとの事前交渉に力を注いでいますが、日本が交渉を有利に進めるためにはむしろアメリカに押し切られないような材料が必要なはずです。その割には対米交渉ばかりに目がいって、他の参加国との関係が置き去りになっているようにみえますが、これも交渉の戦略なのでしょうか。
 今後どのような形で交渉が進むのか、日本と日本農業にとっては大きな問題です。しかしいずれの方向に進むとしても、そもそも農業の後継者がいなければ、TPP以上に致命的問題であることは明らかです。長男である私も家業は継がなかったのですが、実家のあった商店街では私の同年代くらいで家業を継ぐものはなく、いわゆるシャッター通りの状態になっています。
 農業の後継者の問題は、いってみれば地域の後継者の問題、そして農業サイドも単に「農業」の枠の中だけでなく、地域の他産業や全体の活性化という視点も含めてその後継者を考える必要があると思われます。企業の農地取得や参入の問題をふくめて、その地域の将来を見据える長い目線が重要となるはずです。TPPもそういう視線を含んだ懐の深い交渉が、できるのでしょうか。(R)
 

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本号に掲載した林芳正大臣と生源寺眞一先生の対談の日、ちょうど安倍首相がアメリカに到着しました。その関係か、対談の前に組まれていた記者会見が異例に長引き、対談開始時間が大幅に遅れることとなりました。安倍首相のオバマ大統領訪問を控えて、農林水産大臣への質問も多かっただろうことが想像されました。それから一月も経たずして、安倍首相はTPPに正式に参加を表明することとなったわけですが、対談を待たされている間はこちらも気が気ではありませんでした。
 TPPをめぐる政治的な発言には「聖域」であったり、「開国」であったり、「バスに乗り遅れる」であったり、実態のはっきりしない言葉がつきまとっています。ここまでの交渉の情報も開示されず、すでに決定された事項については後発参加国には交渉権が認められないようですが、その一方でアメリカの自動車の関税が残るようなら、TPP最初の加盟4か国はどういう態度をとるのか、TPPによるブロック化をWTOとどう折り合いをつけるのか、そして国益に叶わないならほんとうに撤退できるのか。
 対談で語られている「攻めの農業」の守備範囲には「日本食」も含まれています。世界に広めようとするその足下でその日本の食が崩れては、それだけでももはや個人の嗜好の問題ではすまないと思われます。食べることに執着がないのかと思われるような崩食と、世界各国の料理が簡単に食べられ、同時に世界有数の食品残渣を生み出す飽食の国、日本。安倍首相の「美しい国」のイメージは、今はどういう図を描いているのでしょうか。
 アメリカはシェールオイルで勢いがついています。ナショナル・オーストラリア銀行は、TPPを見越して日本での活動を進めはじめました。したたかな各国の動きに対して、日本は毅然とした交渉ができるのか。TPP以外の各国とのFTA交渉もスタートするだけに、世界に向かって美しい国として誇れる日本となるような交渉が進むことを願っています。

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日本原子力発電が、保有するウランを一部売却したという報道がありました。保有する原発の稼働ができず、銀行への返済資金を確保するためのようです。売却先は伏せられています。売り先がどこで、いくらになるのか、庶民にはうかがい知ることはできませんが、なんとはなしに不気味な感じです。
 一方で原発の下に活断層があるのかないのか、科学者と電力会社の綱引きが続いています。首相は「科学的判断」を主張していますが、実際のところ「科学」に判断は下せません。現実には、「科学」的事実に基づいた「科学者」の判断です。この科学者の判断を受け入れるかどうかは、「政治的判断」ですから、その判断の責任から政治家が逃れることはできません。政治家は国民が選んでいる以上、国民もその責任は多少なりとも負っているでしょうが、原発再稼働を正面から問うた選挙でもない限り、やはり「政治的判断」に責任があることは明白です。
 原発の再稼働については、経済面が主張されますが、実際のところは核の技術やアジアにおける核のバランスといった、アメリカとの関係を含む安全保障にかかわる政治的判断が大きな要素なのかもしれません。これはTPPにも同じことがいえると思います。世界の情勢は庶民が思っている以上に緊迫したものがあるのかもしれません。でなければ普通に考えて、核爆弾と原発事故による大きな被害を受けた世界で唯一の国の国民が、まだ原発にこだわる理由があるのでしょうか。あるいは単に「カネ」の問題であるとしたら、それはそれで情けない話です。
 高度な政治的判断は直裁に国民には伝えられないのかもしれませんが、いつまでも話のすり替えや「科学」を根拠にした責任逃れは、決してよい結果をもたらすとは思えません。海外との関係や世界的企業を守るために国民相手にしたたかな政治をするのではなく、国民のために諸外国とタフな交渉をする、そんな政治家の姿がみたいものです。(R)

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本誌が店頭に並ぶ頃、衆院選はたけなわだと思います。師走の慌ただしい空気の中で、候補者の名前が連呼されていることでしょう。「近いうち」という曖昧な言葉でのらりくらりと攻撃をかわしているように見えた野田首相。案外春頃まで政権を維持するのではと思いかけていたところに、突然ともいえる解散宣言でした。今度はあまりに唐突で、意外な粘り強さに感心さえしかけていた矢先だっただけに、政治と同様に期待を裏切られたような後味が残りました。
 この原稿を書いている時点ではまだ公示されていないので、最終的にいったいいくつの政党から立候補があるのか定かではありませんが、間違いなく多くの党が乱立した戦国状態になっていると思います。多くの重要な課題が山積する現在、各党の方向性は、真っ向から対立しているような、微妙なニュアンスの違いでしかないような、非常にわかりにくいものとなっています。
 本誌の特集で取り上げている地域は、ここ何年、何十年の政策で、いってみれば置き去りにされようとした地域です。もちろん政策によらずとも「都市」の魅力に惹かれて、多くの若者は他出したであろうことは否めませんが、結果として都市への集中、さらには東京への一極集中に歯止めがかかりません。しかし、そんななかでも元気を取り戻す地域は現実に存在しています。
 「だれが首相になっても同じ」といった諦観が支配するような世界と、「私が主人公」として活躍できる世界とは、人はどちらが元気に生きられるのか。「お金」だけしか頼れない世界と、自ら食を作り出し、地域を頼りにできる生き方と、どちらが気持ちよく生きられるのか――錯綜する各党の政策の向こう側にどんな生き方を求めるのか、問われているのは私たちの主体性のような気がします。
 2013年が、みなさまにとってよい年となることをお祈りします。

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最近、ヨーロッパのサッカー中継をよく見ます。落雷で古い共同アンテナが使えなくなったために光テレビにかえた恩恵です。日本人選手もかなりの人数がヨーロッパでプレーしているので、ついつい優先的にみてしまいますが、選手の国籍はどのチームもかなり多様です。先日見た試合では、そのチームには一人も所属リーグの国籍の先発選手はおらず、全員が外国籍でした。日本ではありえません。
 グローバルな経済状況も影響し、これまで余裕のあったはずのビッグクラブが大幅な人員削減をしたり、資源国マネーがついたことで巨額の資金で有力選手をとったりと、選手もお金も世界規模で動いていることが、実によくわかります。とはいえ金に飽かせて有力選手を集めても、それだけで常勝軍団になるかといえばそう簡単ではありません。
 本誌で特集の「種」の世界も、巨大な資本が世界制覇をもくろんでいるかのような様相ですが、農薬耐性雑草の発生で使用される農薬の量は飛躍的に増えています。遺伝子組み換えの恐ろしさはよくいわれますが、膨大に増える農薬の恐怖はすでに農業現場では形になって人を襲いはじめています。モノカルチャーの怖さは、1か所の崩壊がすぐに全体に波及してしまうところでしょう。自然は完全にはコントロールできません。
 話をサッカーに戻すと、国をまたいだヨーロッパのクラブ選手権では、サッカー大国の有名クラブが、日本では知られていない小国のチームと戦うことがあります。大国の強豪を相手に戦う小国チームのホーム戦の応援の熱心さをみていると、簡単にはモノカルチャー化しないという勇気が湧いてきます。そして、その応援のせいか、案外このホームチームが大国チームを破ってしまうことも多いのです。もちろん会場は大興奮。もしかすると、人を含めた「自然」にはモノカルチャーを嫌う何かが組み込まれているのかもしれません。

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尖閣諸島を巡って日中関係が悪化しています。2005年とは違って経済界への影響もかなり出ているようで、出版界の知り合いから、中国との翻訳契約が頓挫していると聞きました。ちょうど国有化報道の少し前に北京でブックフェアがあり、そこでいろいろと話を進めてきた矢先だといいます。大手の出版社ではかなりの量の本が中国語に翻訳されて流通していますが、それらの本も引き上げになっていると聞きました。
 一方では反日デモなどに対し、中国国内での対応は2分されていて、中産階級以上の層は冷静に見ているともいわれます。また、反日に乗じた政府への抗議活動という流れも否定できません。根本の問題がどこにあるか定かではありませんが、現実に経済に大きな影響がでていることは間違いなく、また、国有化という「国」の行為に対しての抗議である以上、そう簡単には済まないように思います。
 当然ながら輸入野菜の過半を占める中国からの輸入にも影響がでることが予想されます。もし完全に輸入が止まるような事態にでもなれば、なにが起こるでしょうか。少なくとも野菜は大幅に値上がることが予想され、おそらくは他の品目や工業製品でも同様のことが起き、景気停滞の中でのインフレ、スタグフレーションとなることも考えられます。
 こういうときこそ、国の形、行方を長期的な視野に立って冷静に判断して、的確な決断をする政治力が求められます。政治家にそれを求めるのは当然ですが、日本の政界の現実からすればそれはむしろ国民に求められている気がします。そういう状況の中で、国の礎である食を支えるはずの「新規就農」の将来を考えれば、おのずとその重要さが見えてくるように思います。(R)

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4年に1度の平和の祭典、オリンピックもメダリストの銀座パレードという余韻を残してあっという間に過ぎていきました。終わってみれば、国内では消費税関連法案の成立、宇治の水害、周辺では竹島や魚釣島を巡る領土問題、世界では激化するシリア内戦やEU問題など、平和とはほど遠い現実が次々と起こっています。
 同じ時期に、アメリカの中央銀行である連邦準備制度理事会 (FRB) バーナンキ議長がGDP等の経済指標に代わって「ブータンが実施している国民総幸福量(GNH)が代替指標の1つになりうる」といった内容の演説を「国民」にたいしておこないました。その真意はわかりませんが、本気で「一般」国民に語り、その上でさらに消費の向上を訴えたりするのなら、とんだ茶番になりかねません。
 本号では農業金融を特集していますが、「お金」の、とくに貸し借りを巡る関係は、結局のところ信頼関係に基づいています。しかもその信頼度は簡単にははかれません。担保は重要ですが、地道に築いた信頼関係がものを言うのではないでしょうか。政治家や中銀総裁の発言は、ある意味お金の貸し借り以上にその責任が問われます。消費税や国民の幸福度について語るとき、その信頼度はいったいなにに基づいて判断されるのか。普段からオリンピック選手並の必死さが伝わっていれば、まだ少しは信頼もできるのですが。

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4年に1度の平和の祭典、オリンピックもメダリストの銀座パレードという余韻を残してあっという間に過ぎていきました。終わってみれば、国内では消費税関連法案の成立、宇治の水害、周辺では竹島や魚釣島を巡る領土問題、世界では激化するシリア内戦やEU問題など、平和とはほど遠い現実が次々と起こっています。
 同じ時期に、アメリカの中央銀行である連邦準備制度理事会 (FRB) バーナンキ議長がGDP等の経済指標に代わって「ブータンが実施している国民総幸福量(GNH)が代替指標の1つになりうる」といった内容の演説を「国民」にたいしておこないました。その真意はわかりませんが、本気で「一般」国民に語り、その上でさらに消費の向上を訴えたりするのなら、とんだ茶番になりかねません。
 本号では農業金融を特集していますが、「お金」の、とくに貸し借りを巡る関係は、結局のところ信頼関係に基づいています。しかもその信頼度は簡単にははかれません。担保は重要ですが、地道に築いた信頼関係がものを言うのではないでしょうか。政治家や中銀総裁の発言は、ある意味お金の貸し借り以上にその責任が問われます。消費税や国民の幸福度について語るとき、その信頼度はいったいなにに基づいて判断されるのか。普段からオリンピック選手並の必死さが伝わっていれば、まだ少しは信頼もできるのですが。

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 最近、「静脈生活者」という言葉を見かけました。生産から消費者へというルートを「動脈」とすると、消費者から廃棄という静脈側にあたる部分で生活している人たちということでした。この静脈生活者は、リサイクルショップやオークションなどを活用し、いまや4人に1人にのぼるという話です。少し特徴的なのは、単に「安く」というだけでなく、無駄なくとかエコといった考え方をもっていて、気に入ったものにはお金を惜しまないという傾向もあるそうです。ある意味「経済的」な考えの持ち主なのかもしれません。
 とはいえ、この「経済的」な人たちばかりになったら、新品を作って売っている「動脈」側はどうなるのでしょうか。出版でも、いまでは新品とならんで中古本の有無や価格が表示され、私たち出版社の人間でさえ、資料で使うなら中古本でいいか、と心動かされるくらいです。新品がまったく売れなくなれば、動脈側が機能不全になり、やがては静脈も活動できなくなるでしょう。
 農産物は、新鮮さが重要であったり消費の一過性といった点で、本の場合とは大きく違います。その意味で静脈生活は考えにくいのですが、その代わり血流になぞらえれば「輸血」といった現象があります。6割の農産物輸入に加えて、労働力の輸入も、この輸血がなければ生命の危機に陥るわけで、絶対に必要です。しかし、同時に動脈そのもの、血液の生成機能の改善をはからなければ、正常で健康な体にはなりません。静脈も動脈も必要なのです。
 「静脈生活者」の報道の一方で、タックスヘイブンに集まる富裕層の資産が2400兆円という報道がありました。世界一の債権国日本の国民金融資産が1400兆円(実際にはすでに500兆ほどしかないともいわれます)といわれるので、その金額は莫大です。動脈だ静脈だと言っているあいだに、陰で膨らんだ「大動脈瘤」が破裂した、ということにもなりかねません。金融緩和でじゃぶじゃぶになったメタボ経済、適切な処置がされるのでしょうか。

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知り合いのフリーの編集者二人が、共同で事務所を構えたことがありました。二人ともお金にうるさいということもなく、それまでも一緒に働いたことがあったため、最初は問題なくやっていました。しかししばらくすると仕事の仕方の違いから経費の使い方、パソコンの利用などで意見が合わなくなり、結局は共同事務所を解消しました。夫婦でも「お財布」の使い方はけんかの種ですし、たった二人でも一緒にやっていくのは簡単ではありません。
 二人でもたいへんなのに多くの国民をまとめる難しさ、さらには国同士をまとめる難しさには、計り知れない部分があるのだろうと思います。ギリシャの離脱問題で揺れるユーロ圏の問題も、これからイタリア、スペインと続くのかもしれません。この問題は、個人の資産や権利、あるいは自国の国益を重要視する時代であればこそ、さらに難しいものとして横たわっているといえるでしょう。
 本文にも出てきますが、今年は国際協同組合年です。国連総会の宣言の前文には「先住民族及び農村地域の社会経済状況の改善」という一文がみられます。資本主義や都市化の進展において弱い立場になったものにとっての協同組合の意義を記したものと思います。巨大化したグローバル企業や国家の前では、一方で弱者を守るための制度は整備されているようで、実際のところどれだけ機能していると言えるのでしょうか。
 今年のJA大会の議案書でも、協同組合の原点に戻って運動を再構築しようという意図があるように思います。それを促したのはたしかにJA自体の問題もあると思いますが、同時に歯止めのない格差拡大を生み続ける現代の社会状況に対する広い意味での問題意識があるように思います。「お金」の問題を超えて人が一緒にやっていくにはなにが必要なのか。JAが求めようとしてるものは、現代社会にとっても答えとなるものかもしれません。まずは、身近なだれかと一緒にやっていくにはなにが必要か、振り返ってみて「損」はないと思います。(R)

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原発の再稼働や消費税増税問題で揺れるなか、尖閣諸島を東京都が購入するという石原都知事の発言が飛び出しました。その発想もさることながら、尖閣諸島は国の所有と思い込んでいたので、「地権者」がいることに少し驚きました。また、かつて開拓によって人が住んでいたということも知りませんでした。中国もその程度の事実は知ったうえでの領土の主張でしょうが、日本でももっと知られてもよいと思います。
原発の方は、「夏のピーク時に電力不足になるかもしれない」という理由で再稼働されそうです。確かに関西一円の電力が突然落ちれば、信号一つとっても大混乱になります。「そんなことはわかったことだからあえて言う必要もない」のでしょうが、「かもしれない」停電と具体的に大惨事を引き起こした原発事故を天秤にかけ、再稼働を選択するのは、ひどすぎるように思います。
本号では農村の資源を活用したバイオエネルギーのことも扱われています。10年ほど前の「バイオマスニッポン総合戦略」がどうなっているのか、原発に代わるエネルギー政策はどうなのか、原発を再稼働したとしたら、単純に次々と再稼働していくのか……。あえて言わないのか、腹の内をわかってほしいのか、政治家と国民の間で阿吽の呼吸が働くのか。
今選挙になれば、関西は維新の会の圧勝ともいわれています。橋下大阪市長の手腕に期待はしたいですが、「民主党」への期待と現実のようにならないよう、私たちも具体的な事実を知らなければなりません。そのためにも、しっかりとした情報公開とその情報にアクセスするための「教育」が必要に思います。(R)

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小学生1年か2年の頃、当時某航空会社のハワイ支店に勤務していた伯父のお土産でアメリカ製のジーパンをもらいました。私の住んでいた地域は比較的温暖でしたので、そもそも子どもが長ズボンをはく習慣があまりないうえに、ジーパンとなればみたことさえないものです。そんな「舶来」の高級品であるジーパンは子どもごころにも荷が重く、結局一度もそれをはいて出ることはありませんでした。それがいまや誰もが普通にはくだけでなく、1000円を切るものさえ売られています。
同じような運命が日本農業の本丸ともいえる「コメ」にも訪れるのでしょうか。大手スーパーの西友が、中国産米を5㌔1299円で販売を始めました。GUTTの交渉で高関税を守る代わりにミニマムアクセス(最小限輸入受け入れ数量)米の受け入れが義務づけられ、WTO体制に引き継がれています。そのうちのSBS(売買同時入札)米が、今回の「安いコメ」の正体です。これまで主食用に売られることは一般にはあまり知られていませんでしたが、ついに、という感があります。
もしTPPに参加するとなれば、コメをはじめとする食品だけでなく、医療や保険制度、金融の各分野への影響、そして毒素条項といわれるISD条項など、かなり広範にわたる影響が予想されています。また、国内での影響もさることながら、FTAの特徴は、WTOと違って選別的・排他的でブロック経済をつくることから、当然排除された国との関係にも大きな影響をもたらす点があげられます。TPPは、安全保障問題という側面ももっていることを忘れてはいけません。
消費税増税問題に注目が集まる裏側で、どの程度「秘密裏」に交渉が進んでいるのか、ふたを開けたらなし崩しに交渉が進んでいたということも予想されます。その結果、ジーパンが当たり前になったように、普通に外米を食べる日が来るのかもしれません。そのとき日本の風景がどんなふうに変わっているのか、それを誇りに思えるのか。誇りをなくしても「国益」が得られるというような選択は、ありえないと思います。(R)

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ドイツが電力輸出国となっているという報道がありました。東日本大震災での原発事故を機に、いったんは原発推進に舵を切った政策から脱原発へと転じ、7基の原発停止や残りの原発も約10年で全停止させると決めたドイツでしたが、当初はフランスからの電力輸入を指摘されるなど、先進国内では否定的にとらえられる面も少なからずありました。それが、昨年10月からは、電力輸出国となっているということで、脱原発に関する議論には大きな波紋となりそうです。
この報道と前後して、日本でも耕作放棄地を活用した再生可能エネルギー推進のために農地法改正の方針が出されています。使われていない資源の有効利用という意味では非常に意味のあることだと思います。7月にはじまる電力の固定価格買取制度とも連動して、地域の活性化にもつながってほしいものです。ただ、その土地についてはもはや「農地」と呼べないともいえるので、省庁による管轄や税制上の問題も予想できます。本来の目的を見失わず、円滑な行政的対応が望まれます。
そのためにも、「地域の意志」がどこに向かっているのか、よりしっかりとしたものにしていく必要性が高まっているように思います。もとより人は一人一人の意志があり、それをまとめるのは簡単ではありません。集会を重ねることも必要ですが、それだけでは声の大きいものの意見ばかりになる可能性もあり、ふたを開けたら行政の方針をまるのみという、そんな光景も目に浮かびます。
本特集で集落営農と地域社会の関係が論じられていますが、地域の意志をまとめる大きな訓練装置の一つとして、これまで集落営農が機能してきた側面が浮かび上がっているように思います。本来「営農」が目的とされますが、その「営農」は何のためなのか。おそらく、少なからぬ集落営農の場で、そこまで踏み込んだ議論が多数重ねられてきたのではないでしょうか。「農地」の新しい扱いについても、その経験が活かされていくものと信じています。(R)

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『農業と経済』2012年3月号 2月10日発売!!

2011年は31年ぶりに貿易赤字となったことがわかりました。東日本大震災とその後の火力発電への移行も大きいですが、円高やエネルギー資源の高騰といった状況も、大きな影響を与えています。一方で11年度末時点での国債発行残高はなんとか1000兆円未満にとどまる見通しとのこと。とはいえ、財政破綻の危機に揺らぐギリシアの債務残高はGDPの1・1倍強、日本の場合はGDPの約2倍ですからとても1千兆円未満だったと喜んではいられません。
現政権では、2015年までに消費税10%という案が出されています。しかし、IMFからは15%まで引き上げるべきだとの指摘もあります。日本の国債はほとんど国内で消化されているから問題ないという発言もありますが、負債が消費税で穴埋めされるなら、債権者の利益を国民全体で守るような格好にもなるわけで、これでは庶民は黙っていられません。社会保障の問題とうまくバランスをとることは一つの手でしょうが、火に油を注ぐような結果にならないよう願っています。
では厳しい財政赤字の状況で、国民は農業への直接支払いをどう見ているのか。TPPに対する報道などからは、現時点では少なくとも半数を超える国民が農業保護よりも経済活性化に関心を持っているとみることができるでしょう。ただこの間に大手マスコミ以外の情報がひろがるなかで、TPPに反対するという声は広がってきているように思います。表面的な「国益」の主張の裏にある、行きすぎた親アメリカ路線を感じる人が増えているのかもしれません。
いずれにしても、農業に対する国民的理解はまだ大きく二つに割れているように思います。この状況を打開するには単にTPPへの反対や直接支払いの増額を訴えるだけでなく、視野の広い建設的な提案を国民サイドからも積極的におこなっていく必要性が高まっているのではないでしょうか。民主党政権であれ他の政党政権であれ、農業関係者やさらには国民が、批判ばかりの万年野党になってしまってはそれこそ危険です。(R)

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初雪の報が各地から聞こえはじめ、冬の到来を告げています。京都の秋は、寒暖の差があまり紅葉に向かなかったのか、例年より色づきが悪いままでした。それでも寒さは確実に増してきていて、東日本の被災地では、寒さ対策が遅れているとも聞かれ、仮設住宅などでの生活が心配されます。電力供給に不安を抱える今年の冬が、できれば暖冬であってほしいと願うのは、勝手でしょうか。
2011年の日本は、大震災や水害という自然災害に加え、円高やタイの水害による経済不振、そしてTPP問題と大きな問題や課題を突きつけられた年でした。加えて世界の経済状況もEU加盟国の債務問題の広がりによって、不安定さを募らせています。先進各国の通貨供給量は増えているので、もっとお金が回って庶民の所得が増えてもおかしくないはずですが、一向にそうはなりません。むしろデフレ傾向は続いていて、お金がどこかに集中、滞留しています。これでは、資本主義経済はなりたちません。
溜まっているお金を流通させるのが正しい処方なのでしょうが、残念ながら世界は逆の方向に走り出しているように感じます。お金の力に人は負けてしまうのでしょうか。そんな悲観的な考えになりがちですが、本号の特集はそれに対する大きなヒントを与えてくれているように思います。事業の多角化や6次産業化は、農家の「経済」を支えるためのものですが、いったいその「経済」とは何なのか。お金はお金そのものが目的ではなく、暮らしを豊かにするためにうまく使い、回すことがその目的です。地域で知恵を出す合う中から、自然とその方向が生まれてきているように感じられます。
さまざまな困難はありますが禍福はあざなえる縄のごとし、2012年が被災された方をはじめ、みなさまにとってよい年となることを願ってやみません。(R)

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このところこの編集雑感で災害のことを扱うことが多く、気も沈みがちになるのですが、避けては通れません。今度は日本国内ではなく、タイで大洪水が起きています。私の弟も今バンコクに住んでいて巻き込まれつつありますが、まだ増水は続いていて、さらに一月くらいはこの状態が続くといわれています。もともと洪水の多い国のようですが、この規模は50年に1度とも聞きます。これは想定外なのか想定内なのか。
日本企業の被害は現時点で460社に上り、自動車産業各社のほか、パソコンや携帯部品、メガネなどの製品供給にすでに影響が出ています。工業製品ばかりではありません。タイは、エビや鶏肉といった食材の供給基地でもあり、それらの加工製品の供給地でもあります。日本での報道は工業団地やバンコクに集中していますが、現実には農村部も壊滅的被害を受けていることは予想に難くありません。むしろまったく状況が把握できていないということでしょう。タイの洪水は確実に、日本の食卓にも影響を及ぼします。グローバル化の負の側面です。
TPPや「自由貿易」をめぐる交渉の裏側には各国、各企業・産業などの思惑がさまざまに絡んでいます。グローバル化を生き抜くための「巨大化」は、同時に巨大なカタストロフィーをもたらすことを「想定」させます。大きすぎて潰せないような巨大化を野放しにする前に、潰れて困るほど巨大化させない努力が必要だと思います。食育というひとつの「運動」のなかには、そういう警鐘も含まれているのではないでしょうか。
最後になりましたが、タイの洪水で被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。(R)

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今日は社内が少し閑散としている気がします。台風の影響で警報がでているため、保育園に通う子を持つ社員が休んでいるからでしょう。すでに近畿では晴れ間が出てきましたが、東海以東はこれからがピーク。すでに100万人以上に避難指示などが出ていますが、大きな被害にならないことを祈っています。
地盤沈下や放射能汚染によって農地に大きなダメージを受けた大震災被災地は2重3重の被災となっていますが、台風では関西の農地もかなりのダメージを受けており、一部の野菜などは高値になっています。スーパーなどの店頭で実感されている方もおられるのではないでしょうか。
原発事故は人災ですが、人災も含め、台風や地震、干ばつや冷害という災害は、予想は難しくとも「想定外」ではありません。そしてそれによって被害を受けるもののなかで最も生命に直結する水と食料の安全保障は、異常気象もささやかれる今、世界的課題になっています。WFO(政界農業者機構)や、本特集にも出てくるFAOやG20の会議など、食料をめぐる各国の綱引きは激しくなっています。ある意味それは「食料」というカードを使った世界的な政治的駆け引きといってもよいのかもしれません。9億という飢餓人口の上での、「命がけ」の綱引きです。
日本や日本人はこの「食料」というカードをどうみているのか。このカードを他国に渡すことはどういう意味をもつのか・・・・・・。災害から農地をどう復旧させるかに、カードの未来も映っているようです。(R)

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タレントの島田紳助さんの引退が大きく報道されています。暴力団関係者との交友関係が原因ということですが、本人の会見での発言とその後報道される「事実」では、内容や印象に大きな食い違いが感じられます。紳助さんとは同世代で、かつての人気番組「オレたちひょうきん族」を欠かさずみていた者としては、いつの間にかずいぶん時間が流れたことを感じます。ことの真相はともかく、彼の年齢がこの判断の一因となっているような気がしてなりません。
さて、一方では菅首相の退陣が決まり、次期首相の座をめぐって水面下での駆け引きが激しさを増しています。数日後には内閣総辞職、そして本号が発売される頃には新首相、新内閣が決まっているはずです。出馬見送りを示唆していた前原前外相の出馬宣言で、現時点での状況は大きく変わりました。前原氏の選挙区民としてはその動向は気にはなるものの、だれが後継になったらなにがどう変わるのかは、全く見えてきません。
本号で扱った土地改良問題は、いわばハード面からこの国のカタチをどう考えるかの指標ともいえます。ハードからソフトという民主党の方針で財政的には大きなシフトが起きました。ハード中心だった自民党政治に対し、国民が選択した一つの結果です。それが早くも大きな曲がり角を迎えている今、次の選択は二者択一では進歩がありません。ではどうするのか。
その答えは安易な大連立やさらにはやみくもな挙国一致ではありえませんが、復興という課題を抱えた日本人として、大きな選択を迫られていると思います。確かにトッププレーヤーの影響と責任は重いですが、彼らをそこへ押し上げている私たちにも責任はあるでしょう。消してしまいたかった「戦後」を、改めて冷静に問い直す時期が来ているのかもしれません。見たくないものときちんと向き合ってこそ、新たな国のカタチが見えてくるのではないでしょうか。(R)

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右腕の関節を脱臼骨折し、20年ぶりに入院をしました。けがから手術まで2週間、手術から3週間、すでに1か月以上のギプス生活となり、今号の編集作業は、病室と会社を行ったり来たりしておこないました。
腕全体がギプスで固定されており、右手はほとんど使い物になりません。関節が機能しないだけで、腕全体が機能せず、さらには入院生活と、いってみれば私の「普段の生活システム」は麻痺してしまいました。その一方で編集作業は、多くの方々の支えやパソコンなどの便利な道具によって着々と進み、編集システムは麻痺しなかったといえます。
東日本大震災では、多くのシステムが麻痺しました。同時に麻痺しなかったシステム、迅速に回復したシステムも多く存在します。システムによる回復力の差はかなりあったと思います。その中で浮き彫りになったのは、意外なつながりや広がりであり、そのつながりの全容がほとんど把握されていなかったということではないでしょうか。現在問題となっている肉牛の放射能汚染問題も、そのつながりが見えなかったために起こった問題といえます。トレーサビリティシステムによって、履歴が遡及できたことは一つの光明でした。
そして、原発問題の根深さが重くのしかかるなかでさらに大きな光明となったのは、日本代表「なでしこジャパン」の女子サッカーワールドカップでの優勝です。体格では欧米に比べて大きく見劣りする日本チームが優勝できたのは、個々の技術力もさることながら、大きなけが人もなく、サブのメンバーも含めてチームがシステムとしてその力を発揮できたからでしょう。私も早く復帰して『農業と経済』チームの一員としてきちんと貢献したいと思います。(R)

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原発事故問題にからんで、責任のなすりつけあいとしか思えない、そして最後にはうやむやになりそうな事態が続いています。一方では、農業者の復旧・復興への足取りが始まっていますが、ここにきて「二重債務」の問題が浮上してきました。再建を目指す人びとにとって非常に大きな問題です。
二重債務は他方に二重の貸し出し、二重の販売があるわけで、被災のなかった業者は二重に利益を得るという見方もできます。とはいえ、銀行、信金や製造・販売業者も多大な損失を出し、簡単に債権放棄や無償供与できる状況でもありません。公的資金の注入という案はありますが、それでなくとも国際的な格付けが低下している日本の財政状況は、簡単にそれを認めるのかどうか。では税金で、というのも庶民としてはつらいのも事実です。
素人考えでは、被災によって失われた資産分を、日銀直接の買取で国債を発行する、つまり円を刷る方法はないのかと思ってしまいます。円への信認の失墜と超インフレ懸念から「禁じ手」ともいわれますが、実際に資産が消えているわけで、円への信認を落とさず、超インフレにさせない規律をもって円を刷る道もあるように思えます。たとえば、世界的に「甚大自然災害対策制度」みたいなものを作り、当該国のGDPに多大な影響を与えるような甚大な「自然災害」が起きた場合、当該国にはその損失の一定割合分の当該国紙幣の増刷を認め、ある一定期間当該国の貨幣価値(相場)を国際的に維持するような制度です。言ってみれば世界全体で被災国の「信用」を維持する仕組みです。
国家的利益の対立から簡単ではないのは当然です。しかし、未曾有の災害には、「想定外」の対応が必要でしょうし、今後起こりうる世界での災害に世界が協力しあって対応していく道を、日本が先鞭をつけて切り拓く覚悟、責任のなすりつけあいばかりではなくそのくらいの覚悟と努力を見せてくれれば、庶民としても納得できる気がします。(R)

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東日本大震災から約1月半、一部復旧が進み、交通の幹線の開通やライフラインなどが各所でもどりつつあります。これらの復旧作業では、自らも被災されながら復旧作業に尽力されている方、各地から応援に来られて作業にあたっている方々など、現場でのご苦労、ご努力はほんとうにたいへんなものと思います。また被災された方々の中からも、再建に向けた動きがあちこちで出てきていますが、まさに混沌から立ち上がるその気力に、心からのエールをお送りします。
その一方で、原発事故の方はいよいよ闇の中という感がぬぐえません。ロボットによる内部の撮影でも、いったいなにがどうなっているのか、むしろわからないということが確認されているような気がします。報道も東電、保安院、そして政府と、いってみれば事故発生に責任が問われる側ばかりからで、不安と疑惑を招く一因になっているのではないでしょうか。第三者的な調査団がはいって状況を公表すれば、たとえ状況が厳しくとも覚悟も含めて腰が据わるのではないかと思えます。
いずれにしても今後の復旧、復興には10兆から、30兆ともいわれる莫大な金額が必要といわれています。今回特集を組んだ戸別所得補償の本格実施、さらにはその継続についても財政的に影響が出ないとは限りません。さらには凍結といわれているTPPの交渉参加についても、他国の動きや震災復旧の見通しなどによっては動き出す可能性もあります。
原発報道の中で、現場作業員の就寝の様子が写されたものがありました。防護服姿で薄いシートの上で眠る姿は痛々しいものがあります。今後、震災からの復旧・復興や、戸別所得補償・TPPといった国の方針を定めていく際に、これら現場の現実の姿を十分に考慮した上での対応を考えてもらいたいものです。そのためには、透明性の高い情報を基礎とした、現場と各機関、そして政府との緊密なコミュニケーションが必要とされているのだと思います。(R)

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3月11日の午後3時まえくらいでしょうか、事務所がゆっくりと揺れているのを感じました。「地震?」激しくはありませんでしたが、船に揺られているような横揺れで、おそらく震源地は遠いだろうとはわかりましたが、まさかそれが宮城県沖の地震であるとは思いもしませんでした。その後に起こった惨状は連日の報道のとおりです。
西日本でも震災直後にスーパーの棚からインスタント食品が姿を消すといったパニック的な反応がありましたが、小社でも印刷用の紙が一部払底して代替が必要になったり、執筆者との連絡や校正のやりとりができなくなるといった事態が起こっています。本号の執筆者も、震災の影響を受けられた方は少なくありません。一部の報道では、被災地の工場の損壊による製品不足から、世界の自動車の製造が30%ダウンするといったことも聞かれます。未曾有の大災害は、日本観測史上最大であると同時に世界的規模の大災害であるということだと思います。
本号で特集したセンサスによる分析から読み取れる傾向に加え、今回の震災がもたらすさまざまな影響が、農業にも大きく関係してくるものと思います。人的被害はもとより、地震による地盤沈下、海水による塩害、原発事故による放射能汚染、さらには風評被害と、いずれも農林水産業に直接ダメージを与えるものとなっています。
こんな時こそ多くの力を結集して災害を乗り越えていかねばなりません。そのために、政治の指導力と同時に、中央官庁の総合的、積極的な対応が必要だと思われます。縦割りや責任の所在、省庁同士の利害や地方と中央の軋轢といった問題を超え、「優秀な」日本の官僚の実力をこんなときにこそぜひ発揮してもらいたいものです。

東日本大震災で被災された方々にこころよりお見舞い申し上げます。亡くなられた多くの方々に哀悼の意を表しますとともに、一日も早い復興をお祈りいたします。(R)

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