ホーム > お知らせ > 『農業と経済』2014年10月号

『農業と経済』2014年10月号

広島での水害をはじめ、今年も各地を大きな水害が襲いました。犠牲になられた方々のご冥福をお祈りし、被災された方々にお見舞い申し上げます。
 大きな土石流災害となった広島の八木地区は、古くは水害に因んだ地名がついていたといわれています。多くの地域で同じように古い地名が新しい地名に変わっていますが、それとともに地域の知恵が途絶えてしまうのは、たいへん残念なことで、過疎化や都市化の進行にともなって起こっている、全国的な「地域の知恵」の損失とも見て取れます。
 一方で、全国での空き家の数は昨年度に800万戸を突破。約7軒に1軒は空き家ということになります。耕作放棄地と同様、放置された空き家は、各所で問題化しています。対策をとる自治体も出てきていますが、個人の所有権に関わるため、思うようには対策が進まないのは、耕作放棄地の問題とも重なります。すでに所有者に連絡が取れなくなったような土地が、全国ではどのくらい生じているのでしょうか。
 こういった空き家や耕作放棄地の増加とは裏腹に、都心部の高層化や新規住宅開発が、減ったとはいえ、なくなっているわけではありません。住宅や土地を必要とする人と現物の所在のミスマッチは、拡大しているともいえます。この問題は、人口増減の地域差や収入の格差、グローバル化の問題などと通底する根本的な問題を示唆しているものと思います。
 本号で特集される環境や生物多様性といった問題も、無縁ではありません。しかしこれらの問題を根本から一気に解決するのは、おそらく想像を絶する犠牲を生じ、現実的ではないのでしょう。そうであればこそ、人の知恵や努力が活かされるべき問題です。特に自然環境に強く関わる部分では、その風土や歴史を知ることは大きな要素です。新しい知識、新技術を活かすためにも、地域に根ざした知恵をはぐくみ、工夫していく人材やネットワークの重要性が増しているのだと思います。(R)

このページのトップへ