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農業と経済 2018年4月号から

【編集雑感】
 大根おろしが好きだ。しかし大根おろしを作るのが1番苦手だ。生の大根をすりおろす、ただそれだけのシンプルな料理。だがそれだけになかなか手強い。
 新鮮な大根は汁気が多くおろしやすいが、冷蔵庫で何日も保存していたものはかたくなり、おろし金にかけるだけでも一苦労だ。もちろん風味も舌ざわりも鮮度によって異なる。おろす人間の力加減、おろし金の種類によっても滑らかさは雲泥の差だ。フードプロセッサーで作った大根おろしは、なぜ食感がいまいちなのだろうか? 
 このすりおろした大根に醤油をかけて食べる、ただそれだけで絶好のおかずになる。炊き立てのご飯なら、おかわりまでできるだろう。世界的な和食人気と言われているが、この大根おろし一つとっても、油や火を使わずシンプルな行為で完成してしまう、栄養面でも味の面でも、なんとまあよくできた料理だと、改めて感心してしまう。
 さて今回の特集は「食品ロス――発生メカニズムと対策」。家庭から出る食品ゴミの量が想像以上に多いことは、農水省の調査結果からも身につまされる。このシンプルな料理である大根おろしを作るにあたっても、やはり皮を廃棄せざるを得ないことが多い。皮を厚くむきすぎる「過剰除去」などの野菜の調理くずも、総体でみると大きな数字になる。
 食品ロスというとついコンビニ、外食産業などの食べ残しが思い浮かぶが、家庭での食を守る人たちにも、意識の改革が必要だと思う。それは未開封のまま捨てられる「手付かず食品」にスポットを当てた浅利美鈴先生の論考にも示されている。
 そのためにはまず大根おろしを作る、そのことから始めるべきではないだろうか。生の大根をおろす、これはかなり億劫な、力仕事だ。ゴリゴリと大根をおろし金に擦りつけて格闘し、手を動かしているあいだに、食べ物を大事に思う気持ちは、自然とわき起こってくる。(K)

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