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『農業と経済』2016年6月号

東日本大震災から、5年。被災地ではまだ復興もままならない地域も多いなか、今度は九州で大きな地震災害が起きてしまいました。震度7、震度6クラスの地震が続き、広範囲で2次災害、3次災害が心配され、被災地の方々の不安はいかばかりか、想像を絶するものと思います。亡くなられた方のご冥福をお祈りするととともに、一日も早く被災地の生活が落ち着きを取り戻せることをお祈りいたします。
 この大規模な自然災害の少し前、国際社会には「人」による激震が走りました。「パナマ文書」です。タックスヘイブンと呼ばれる軽税率地域の金融センターを利用する法人や個人の取引を記載したこの文書は、一国の首脳を辞任に追い込むなど、大きな影響が拡がっています。タックスヘイブンで動く金額は世界のGNPの4分の1にもあたる2200兆円ともいわれ、日本の企業等からもケイマン諸島だけで50兆を超える金額が流れ込んでいると言われています。これだけの金額が各国の税収に関わっているにもかかわらず、その実態がなかなかわからなかっただけに、この文書が公表された意味は計り知れません。
 この事態に日本の政府は、「企業への影響を考えコメントを控え」、「調査しない」方針を出しました。どうして「国民への影響を重視し」「徹底的に調査する」ことをしないのか。GDPの250%にのぼる先進国中最悪の財政赤字を抱え、消費税増税をはじめ、国民の税負担の増加を求める政府の判断とは思えません。もちろん、タックスヘイブンを利用することが、即違法ではありませんが、不透明なお金の動きは、違法性の温床であることはだれでも想像できるでしょう。
 これだけ露骨になにを重要だと思っているかを見せつけられると、大災害からの復旧・復興もどこに視点があるのか、透けて見える気がします。政府のこうした判断が、内需の活性化にとって最大の障碍であり、人口減少の要因ではないでしょうか。国民のこの不安がなくならない限り、どんな経済・金融政策も今の流れは変えられないように思えます。(R)

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