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『農業と経済』2014年12月号

 トヨタやパナソニック、東芝といった大手の企業が異業種である農業への参入を試み、アップルが日本のある農園に関心を示すなど、他産業からの熱い視線が農業に集まっています。これまでは、比較的単純な異業種からの農業への進出でしたが、自らの持つ技術力を活かした農法やシステムを携えて参入しようとしている点が、これまでと違うように思います。また、これらの企業は日本の農業という範囲ではなく、世界的な食料不足やグローバル化という観点に立っていることも特徴的でしょう。  もちろんこれらは企業にとって「ビジネスチャンス」であるからこその参入です。同時に受け入れる地域にとっても、活性化のチャンスであるのも事実でしょう。その成功の鍵の一つは、やはり地域と参入企業の相互理解や協調がしっかりできるかどうかにあると思います。優秀なシステムも、たとえば水の利用一つで稼働さえおぼつかなくなります。これを資本の力で強引に解決しようとすれば、むしろ問題は大きくなるような気がします。  普及員は参入企業にどう向き合うべきなのでしょうか。もちろん、要請に対しては、参入企業であろうと地元農家であろうと、平等に対応しなければなりません。しかし、ごく狭い範囲での「経営」に対しては一律に情報を提供できても、長期的な視野に立った対応を提案するには、それぞれの個性や特性、置かれている状況などを考慮しないと難しいでしょう。経営側がすぐに成果の出るような提案を求めてくる場合、農業がそういうものでないことを理解してもらわねばなりません。  他業種では、ここまで地域と密着した判断を求められることはあまりないのではないでしょうか。同業で得た有益な情報を他社に流すことは、敵視さえされるでしょう。「普及員」という存在は、農業という活動に特異な性格、条件から生まれているといえます。他産業で当たり前ともいえる「競争」の概念をそのまま農業に持ち込むのは危険です。(R)

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